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2016.12.27 17:05

好奇心に火をつける「変な宿題」

illustration by Kenji Oguro

illustration by Kenji Oguro

ノーベル賞の受賞記者会見のたびに言われる「興味、好奇心が大事」というセリフ。大賛成しつつも、学校や研修など教育の現場で、それはどうやって育んでいけばよいのだろうか。その鍵はきっと「変」である、という変な仮説をここに発表する。



「1週間が8日に増えたら、その1日何をしますか?800字以内で書きなさい」
 
この不思議な問題を見つけたのは、電通クリエーティブ塾の募集ページ。1998年、僕が大学院1年生の時です。僕の答えはこうでした。

「ご存じの通り、カレーは煮込めば煮込むほど美味しくなる。僕はカレーが好きなので、1日増えた分、当然余計に1日煮込みますけど」という内容を800字に膨らませ、原稿用紙に書き付けました。その時、「あ、冷蔵庫にカレーのルーがあったな」と思い出し、刻んでティッシュで包んで、匂い付き作文として送付。結果、来たのは……合格通知でした。

入社後も、変な問題は山ほど続きました。「彼女と喧嘩しました。絵だけで謝れ」「目が覚めたら蛇になっていました。よかったこと3つ、悪かったこと3つ書きなさい」とか。頭が痛い、けど、面白い。

時は流れ、広告やクリエイティブの授業を頼まれるようになると、今度は僕が、授業で変な問題を出すようにしました。答えが1つでない面白い問いは、もっと小さい時からやればいいのに、と思っていたので。好評をいただいた時、ふと思いました。僕もみんなも、なんでこういう問題が好きなんだろうと。
 
そこでやってみたのは古今東西の伝説の面白い宿題や授業の収集と分析。たとえば、都立中学のあるグレートティーチャーの授業は「隅田川花火大会の翌日、新聞5紙の隅田川花火の記事を配り、何新聞が自分が見た花火を一番描写できているか比べさせる」というもの。面白いでしょう?

その他、中学3年間1冊の本だけを読むという灘中の伝説の授業、日比野克彦さんの生徒の個人的な記憶を引き出すアートの教え方@芸大、黒澤明さんの自伝『蝦蟇の油』に出てくるハミ出た解答を褒める先生の授業、イタリアの幼稚園レッジョエミリアのワークショップから島津藩の郷中教育まで、たくさん見てみると、自分のストライクゾーンがわかってきました。

それらは、とある映画に出てきた教育法に近いことを発見。アメリカの少年が空手を習いに行くと、車のワックスがけを大量にさせられ、以後連日雑用。空手はいつになったら教えてくれるんだ!とブチ切れた時に、雑用の動きで防御を教えられていることがわかります。結果、大会で優勝する、というお話。

そう、『ベスト・キッド』です。教えたいテーマがある→それを体験させて学ばせるために、一見関係のない変な課題を出す。テーマは最後まで教えない。これが私が発見した教育方法「ベスト・キッド方式」です。

この方式に則って、クリエイティブに必要な要素(発想力/アイデアを量産する/制約を活かす/リサーチ/自分の尺度を持つ/人と協働するなど)を学ぶための、変な宿題を量産。さまざまな場所で、実践してきました。
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倉成英俊=文

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