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2016.12.26 10:00

親の急死に奮い立った、先義後利の起業家

(左) 日本ベンチャーキャピタル 照沼大 (右) BOLSTER 松田忠浩 (photograph by Toru Hiraiwa)

(左) 日本ベンチャーキャピタル 照沼大 (右) BOLSTER 松田忠浩 (photograph by Toru Hiraiwa)

松田忠浩が2016年2月に創業したBOLSTERは、「親孝行、お届け便。」などのサービスを提供するスタートアップ。スマートフォンに保存した写真データから手軽に、きれいな手紙を作成する同サービスは、「さあ、親孝行をはじめよう。」というキャッチコピーさながら、孫の写真を離れて暮らす両親に郵送するなどの利用を想定している。

照沼大が執行役員を務める日本ベンチャーキャピタルは、16年8月より同社に投資を行っている。


照沼:知人を介しての出会いは、今年5月。「親孝行、お届け便。」の説明の際は、既に類似サービスがあるものの、立ち上げの背景にある親の急死を涙ながらに語る松田さんの姿に、事業への思いの強さを感じました。志に共鳴したからこそ、当社では異例の創業直後に投資をしました。

松田:親の急死は、人生を変えた大きな出来事。サービスに深く共感していただけたのは、2年前に大病を経験し、家族のありがたさを再認識したという照沼さんだったからこそ。出会いからわずか2カ月、ベータ版の段階で投資をいただけました。

照沼:ソフトバンク時代に豊富な実績がある松田さん。社内で将来を嘱望され、デジタルマーケット業界でも人望の厚い“業界のアニキ”への出資に、迷いはありませんでした。

松田:私はゼロイチを作るのが好きで、周囲の期待を必ず上回りたいタイプ。前職で数多くの事業やメディアの立ち上げに参加し、数億円の赤字で着任、5年で数十億円の黒字に転換した事業再生経験もあります。

独立後初のサービスを「親孝行、お届け便。」にしたのは、私が通信キャリア出身で、デジタル分野の最先端に携わる中、シニア世代がデジタルの恩恵を受けていないことを実感してきたから。4分の3がスマートフォンを持っていないシニア世代が触れる機会のないデジタルコンテンツを、ネットとリアルを融合させて、提供することを考えました。

照沼:松田さんが優れているのは、シニア向けビジネスの基盤として「子供がシニア世代の親へ送る封筒」に着目したこと。「親孝行、お届け便。」を継続利用してもらえば、毎月届く封筒が他のサービスを追加提供できる“メディア”になるのです。

松田:デジタルを使わないシニアには、折り込みチラシのような「ポストに届く郵便物」が、今でも“最も親しみのあるメディア”。そこに息子や娘、可愛い孫の写真が入っていれば、気になるはず。

「親孝行、お届け便。」を第一歩に、シニア向けサービスを続々と仕掛けます。10月21日からは、「親孝行、お届け便。」と共に届くサービスとして、脳トレコンテンツ「脳の体操」を始めました。
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文=山本隆太郎

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