ビジネス

2016.12.20

ECからリアル店舗へ、男性シェイバーHarry'sの挑戦

Harry's共同創設者のアンディ・カッツ・メイフィールド(写真左)と、ジェフ・レイダー(写真右)。

男性用シェーバーのスタートアップとして成功しているハリーズ(Harry’s)。ECでブランドを築いた同社が、次に狙うのは“リアル”の売り場だ。

シェーバーを扱うスタートアップは幾つかあるが、その中でも注目はハリーズだ。高級感を売りにブランドを築き、商品をECサイトで販売。替え刃を定期購入させるサブスクリプションモデルが特徴だ。シェーバーは、定期的に替え刃を購入する必要があり、かつ買い忘れが多い商材。そこに着目し、定期的に自宅に届くサービスを提供して売り上げを伸ばしてきた。

ハリーズのユニークさは、そのブランド力とマーケティング手法にある。同社の商品の価格帯は、高価格帯を維持する大手ブランドと、低価格を売りにする新規参入組の中間に位置している。そうした中で競合他社に対する強みとなるのが、品質とデザイン性の高さだ。

同社は高品質の替え刃の製造を請け負うドイツの工場に、2014年に1億ドルを投じた。また、デザイン性の高さを生かし、シェービングクリームなどの関連商品も開発。そうして作った商品のブランドストーリーを動画で訴求している。ニューヨークには自社製品を使った理容室も展開するなど「価値」や「体験」を重視したマーケティングで成功してきた。

一方、今夏には、米大手小売業ターゲットの売り場に進出を果たした。ECに売り上げを奪われ、リアル店舗を持つ小売業は苦境に立たされている。そうした中で最大手のウォルマートは30億ドルで「Jet.com」を取得。大手百貨店のメイシーズは100店舗を閉鎖する一方で、ECを強化する方針を打ち出している。

ECで成功したハリーズは、なぜ敢えてリアル店舗の売り場を選ぶのか?同社の共同創業者ジェフ・レイダーは言う。

「従来は動画を使ってブランドストーリーを展開してきましたが、リアルな売り場からも自社の価値を訴求したいと考えました」

8月21日、ターゲットの1,800店舗の棚に、一斉にハリーズの商品が並んだ。ターゲットはシェーバーの販売シェアで、ウォルマートに次いで全米2位。ハリーズの担当者は、この日に向けて売り場のディスプレイを作り、パッケージをデザインし、シェーバーの品質を改善した。需要の拡大に備えて、生産能力の増強を図り、研究開発も強化している。

シェーバー市場は全米で30億ドル。その6割をジレットが握る。新興勢力のハリーズは、リアルとネットの両輪で寡占市場を切り崩す。

Harry’s共同創設者のアンディ・カッツ・メイフィールドと、ジェフ・レイダー:2014年にシェーバーのEC事業をスタート。サブスクリプションモデル(定期購入)が支持され、50万人以上の顧客を獲得している。ジェフ・レイダーは、メガネのECサイト「WarbyParker」の共同創設者としても知られる。

スティーブン・ベルトーニ = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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