そうした株としてまず挙げられるのは、元パートナーが財務長官に指名される見通しの金融大手ゴールドマン・サックスだ。同社株はこの約1か月間、優良株で構成するダウ工業株30種平均の構成銘柄の中でも、最も好調に推移している。
もう一社は、今月6日に行われたトランプとの会談が話題になった孫正義が株式の80%以上を保有する米携帯会社スプリントだ。同日以降、株価は11%上昇している。
一方、こうした中で立て続けにインタビューを受けているのが「物言う株主」、カール・アイカーンだ。トランプ新政権の誕生によって、最も大きな利益を享受することになるのは恐らく、このアイカーンだろう。初期のころから選挙戦を支援し、トランプの経済政策の立案にも影響を与えている。
気になるエネルギー分野への影響力
そのアイカーンにとって、この2年近く弱点となってきたのがエネルギー関連株だ。アンダーパフォーマンスが続くこの分野への投資が多いことが、アイカーンの資産価値を大幅に縮小させてきた。
それでもアイカーンは、この分野は悪くない投資対象だと考えてきたとみられる。「無謀な規制によって不当な損害を受けている」と主張し、改善を求めて闘ってきた。数か月前には米環境保護局(EPA)宛てに書簡を送付。再生可能エネルギーの利用促進のための「グリーン電力証書」の売買が、石油精製事業を破綻に追い込み、小中規模の精製業者を破壊していると訴えた。
この点においても、アイカーンの活動が成果を上げそうな見通しが出始めている。トランプの政権移行チームは11日、新たなEPA長官にはアイカーンも注目するオクラホマ州司法長官を指名する方針だと発表。同州は、EPAの方針に反対して訴訟を起こしている州の一つだ。新長官が(従来の)エネルギー分野を重視する人物になれば、アイカーンのポートフォリオにやさしい政策を推進すると考えてもいいだろう。
アイカーンが率いる持株会社、アイカーン・エンタープライズ(IEP)株は11月の大統領選後、1か月ほどで28%上昇した。だが、2013年に記録した最高値からは、まだ56%低い水準だ。それでも、IEPの投資先は過去50年近くにわたって史上最も優秀な、年率30%近い運用成績を残してきた投資家のポートフォリオだ。IEP株は今、市場の中でも最も買うべき銘柄の一つと言えそうだ。