ビジネス

2016.12.12

激化する米中「半導体戦争」 最先端チップ開発を急ぐ中国の焦り

Victor Moussa / shutterstock.com


警戒心を強める米国政府

YMTCがマイクロンとの提携協議を否定したのは、米国政府による批判をかわす目的があると見られる。ペニー・プリツカー商務長官は、中国政府による介入について次のように非難している。

「中国政府主導の半導体業界への前例のない規模の投資は、市場を歪めてイノベーションを阻害する恐れがある。これまでに政府が過度に介入したケースでは、グローバル市場で供給過多が生じ、製品価格が大幅に下落して世界中で職を失う人が増えるなど、業界が大きく傷ついた」

オバマ政権は、口頭での牽制に止まらず、具体的な行動にも打って出た。先週の買収阻止に加え、清華紫光集団によるウエスタンデジタルに対する37.8億ドルの出資計画を破棄させたのだ。ウエスタンデジタルは5月にサンディスクを買収して傘下に収めている。

また、オバマ政権は先月、米国の半導体業界を保護するためのワーキンググループを発足させた。商務省によると、米国の半導体業界は25万人を雇用しており、製品輸出額では3番目に大きいという。トランプ政権が誕生すると、中国への対抗措置はさらに強化される見通しで、中国企業が米国の半導体技術を獲得することはこれまで以上に困難になると思われる。

中国による大量生産の実現性

プリツカー長官による発言やトランプの大統領選勝利よりも以前から、XMCが数年以内に3次元NANDフラッシュメモリの大量生産を実現する可能性は低いと見られていた。ガートナーは、中国で展開中の半導体プロジェクトの実現可能性を分析するレポートを10月に公表したが、XMCについては、2020年までに10万枚のウェハーを生産する可能性は40%と、全20プロジェクトの中で最も低い確率となっている。

これに対し、IHSマークイットのシニアディレクターであるLen Jelinekは、XMCが2016年末までに3次元NANDフラッシュメモリの生産を開始すると楽観的な予測をしている。

「メモリチップの製造は学習サイクルが短いため、新工場が稼働する頃にはXMCは大量生産を実現する体制が整っているだろう。そうなれば、XMCはマイクロンなど海外企業と提携をせずに、グローバル市場に参入することが可能になる」とJelinekは話す。

編集=上田裕資

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