この高級ビーフは、もちろん安くない。マユラステーションのビーフを使った一般的なステーキは約300グラムで288ドル(約3万2,600円)だ。
コスト削減のためにチョコレートを餌にしている多くの牧場とは異なり、マユラステーションは肉の品質を重視。トウモロコシやオーツ麦、小麦やふすまのほかに秘密の材料も含む、質の高い飼料の栽培に多くの時間と金を費やしている。
最終的には「幸せな牛、イコールいい牛だ」と、デブラウンはフォーチュン誌に語っている。チョコレートを餌に加えることで、牛がより穏やかで幸せそうになったと彼は言う。だが糖分の高いミルクチョコレートを与えることで、牛の健康は損なわれないのだろうか?
「そんなことはない」とデブラウンは言う。栄養バランスの優れた餌にチョコレートが占める割合が30%であることに加え、人間と牛ではチョコレートを食べる“期間”が大きく異なる。「人間は幼い頃から数十年にわたってチョコレートを食べる人もいるが、うちの牛たちがチョコレートを食べる期間はわずか4か月だ。悪影響はない」と言う。
チョコレートを食べて育った純血種の和牛に対する需要は高まる一方で、そのためマユラステーションでは、餌場を増やして海外市場への供給量を増やすことにした。また2013年には、カナンダ国立公園の近くにレストランも開設。同レストランは南オーストラリアで一番のステーキハウスに選ばれ、観光名所となりつつある。