カリスマファンドマネージャー「投資の作法」

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日銀 黒田東彦総務(PAUL MORRIS/getty images)


累進課税の強化で格差是正?

格差是正の少ないチャンスは、起業することでサラリーマン社会の枠組みから外れることである。24時間365日働く世界観の中で、存分に力を発揮するしかない。実際、今までもそうやって一発逆転を果たした人たちはたくさんいる。

しかし、それでも起業に成功した人たちとそうでない人たちの格差は残る。ではその場合、どのように格差を是正すべきか。「累進課税の強化」しかないと思っている。健康で親に殴られることもなく、安心して高い教育を受けることができ、幸いにして競争に勝つ機会を得た幸運な人たちはその力を存分に発揮して存分に稼げばいい。しかし、そういう才能や環境や運をも含めて恵まれた人たちは一定以上に稼いだ額を、そうでなかった人たちに還元すればいいのだ。例えば、年収が2,000万円を超えたら税率は5割、5,000万円を超えたら、7割にする。そうすれば、格差を相当縮めることができるだろう。

もちろん、「稼げる人のやる気を削ぐのはよくない」という意見もよくわかる。一生懸命稼いでも、その多くを税金で持っていかれたらやる気を失うし、そうした人のやる気を削ぐのは社会的にも大きな損失だ。そこで、一定の納税額によっては勲章を与えるなどの名誉を付与することもひとつの方法だと思う。

もうひとつは、年収2,000万円を超えた金額について、超過分の3分の1を住宅や車の購入費、交際費などの費用を領収書とともに控除できるようにする方法だ。これならば、消費を促進できるし、納税者にも税制上のインセンティブがある。例えば、年収5,000万円の人は2,000万円を超える3,000万円の3分の1、1,000万円分の飲食代を控除できるようにすれば、消費も活性化する。高額納税者も一定のプライドを持てるだろう。

また、所得税の累進課税を引き上げた場合、株式の譲渡益の課税や配当に対する課税の相対的な割安感が強まるので、結果的に株式への資金のシフトが社会的に強まる。その場合、リスクマネーが増加するので社会的な効用は増すが、そこでも稼ぐ人と稼げない人の格差が広がるかもしれない。トマ・ピケティも「資本家の収益率が、労働者の収益率を上回っている」と指摘している。「R(資本利益率)>G(経済成長率)」という不等号が、まさにそれを表している。

じつは、最近批判されている、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や日本銀行の株式保有が、この問題に対するひとつの解かもしれない。GPIFや日銀の上場投資信託(ETF)の爆買いはすなわち、「国=国民が企業の収益を飲み込む」ということなので、「R>G問題」(Rが長期的にはGを上回るとき、資本主義が持続不可能な格差を生み出すという構造)のひとつの先端的な解かもしれない。

所得格差を累進課税で平準化すると同時に、日銀やGPIFが株式を保有することで、結果的に富の平準化につながる可能性はある。課題は、分配局面で日銀のETF資産をどのように処理するか、ということだろう。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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