ポルシェ博士の哲学が息づく名車パナメーラ[クルマの名鑑 vol.4]

フルモデルチェンジしたポルシェ「パナメーラ」(photograph by Tsukuru Asada (secession))

ポルシェの「変革に挑む勇気」に導かれた名車

今でこそ、世界に名だたるスポーツカー・メーカーとして君臨するポルシェだが、若き日のフェルディナント・ポルシェ氏(1875ー1951)は、自らの頭脳をセールスポイントに自動車メーカーの研究開発を請け負っていた。

最初に手掛けたのはローナー社製ハイブリッド車であり、なんともモダンな設計だった。その後、自動車メーカーの設計トップを歴任し、名門ダイムラー社から設計主任の重責で迎えられる。

ポルシェ博士が手がけた名車を挙げるには紙幅が不足するが、例えば、漫画『ルパン三世』でお馴染みの「SSK」は、実は国際レースで大活躍を収めた名車中の名車だ。その後、現在の本拠地シュトゥットガルトにコンサルティング業を行うポルシェ社を設立し、ヨーロッパ全土の自動車設計に影響をおよぼした。

高性能車で名を馳せると同時に、ドイツの国民車構想も実現する。家族4人のための移動空間を備え、最高速100km/hに達し、7L/100km以下の低燃費に加えて、現在の小型車並みの価格帯という厳しい条件にもかかわらず、見事にやってのけたのだ。戦後、息子のフェリーが「356」を開発し、念願のスポーツカー・メーカーとなる。1964年には、伝説となる初代「911」を世に送り出した。

そして今、21世紀に入ってからは、「カイエン」や「マカン」のヒットに加えて、「パナメーラ」という異色のラグジュアリースポーツサルーンで新しいマーケットを開拓する。今年6月にベルリンで発表された最新型では、一目でポルシェとわかるクリアな外観を得た。

また先日のパリ・サロンで発表された「4Eハイブリッド」の心臓部には、2.9リッターV型6気筒ツインターボエンジンと大出力モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドを搭載し、ポルシェの原点であったローナー・ポルシェを彷彿とさせる。時代は変われど、ポルシェ博士の哲学が息づくクルマ作りこそがポルシェの真骨頂だ。

最新の環境対応がなされたハイテク工場が、新世代ポルシェの生産を一手に担う。

創業の地である本社工場に「911」、「ケイマン」、「ボクスター」といった2ドア・スポーツカーの生産を集約する一方で、2009年に1億5000万ユーロを投じてライプツィヒ工場が新設された。現在ここでは、「カイエン」、「マカン」、「パナメーラ」といった新世代ポルシェが作られている。

機械と人が共同で作業することを眼目に設計された生産ラインでは、機械が得意とする重作業と、熟練のクラフツマンならではの手作業を組み合わせることで、クオリティと生産性の高さを両立する。ルーフ上に設置された太陽光パネルで発電し、バイオマス発電所から供給される暖房を活用するなど、最新の環境対応がなされているのも、グリーンフィールドで新設したハイテク工場ならではの配慮だ。

さらに今年、800万ユーロを投じて、創業の地ツッフェンハウゼンにV8エンジンの工場が新設されたことも、ポルシェの未来を語るに欠かせないトピックスだ。

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[DATA]
駆動形式:4輪駆動
全長:5,049mm
全幅:1,937mm
全高:1,427mm
最高速度:306km/h
価格:23,270,000円(税込)
問い合わせ:ポルシェ カスタマーケアセンター(0120-846-911)

text by Yumi Kawabata、edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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