なぜ、自社ビルを持っている大企業までWeWorkと契約するのだろうか。
ミゲルによるとその理由はさまざまで、たとえば「本社が郊外にあり、都市のど真ん中に拠点を置きたい」「オフィスが手狭になった」「クリエイティブやイノベーション関連の部署を新設したが、他の部署とは人材のタイプが異なるので別のオフィスに配置したい」「WeWorkのようなオフィスで働きたいと思っている人を採用したい」など千差万別だ。
WeWorkの顧客の中からは、企業価値が1,000万ドル超のスタートアップもいくつか出始めているという。「創業から6年経つといっても、我々が急成長したのはここ1〜2年のことです。だからまだ結論を出すには早いですが、これから数年のうちに成功するスタートアップがもっと出てくると思います」と、ミゲルは自信をのぞかせた。
都市がもつ「強み」を活かす
となれば、ますますその人気の理由が知りたくなる。クリエイティブな人たちはなぜWeWorkを選ぶのか。そのための空間づくりの秘訣とは。ミゲルはこう答える。
「重要なのは、最初から顧客の気持ちを正しく導くこと。彼らが初めてオフィスを訪れた瞬間からモチベーションを高め、インスピレーションを得られるようにするにはどうすればいいか。それをずっと考え、さまざまなアイデアに投資してきました。これが我々のビジネスの根底にあります」
モチベーションやインスピレーションを得るのに、同社の洗練されたオフィスデザインが大きな役割を果たしていることは疑いようがない。
創業当初は、差別化を図るため、あえて「一般のオフィスビルとは反対のことをやろうと思った」とミゲルは語る。
「いわゆるオフィスではなく、ブティックホテルのような空間を意識しました。たとえば照明なら、部屋の隅々まで照らすような強い光ではなく、居間にいるような温かみのある光に。普通のオフィスデザイナーが見たら、『照明レベルが低すぎる』と文句を言うくらいです」
とはいえ、仕事場である以上、顧客にとって働きやすく、また生産性向上につながる環境でなくてはならない。その点についてはどんな工夫をしているのかと問うと、ミゲルは、まずオフィスがガラスのパーティションで区切られていることを挙げた。これによって、部屋が分かれていても、働く人同士で熱意が伝染し、共有されるのだという。
「ほかの人たちと一緒に仕事をしていることがわかれば、モチベーションが上がるし、興奮を分かち合うこともできる。こういう小さなオフィスでは、全員が友達みたいなもの。誰かが契約を勝ち取れば、みんなで祝福したくなります」
実際に会社の垣根を超えて、会員同士がハイタッチする姿は日常的に見られるという。同社がとくに大切にしているのが、この会員同士の「つながり」だ。