「アメリカの会社に買収され、言うことを聞かされているのだろう、と思われがちですが、そんなことはない」
発する言葉に、一切の迷いがない。「ついていけば大丈夫」と思わせる、説得力がこの人にはある。
恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」を提供するエウレカの共同創業者で副社長の西川順。2012年にサービスをスタートさせ、会員数は日本と台湾で450万人を超える。昨年5月、アメリカに本社を置くメディアグループ「InterActiveCorp(IAC)」の傘下に入ったことも話題を呼んだ。きっかけは、32歳のとき。
インターネット業界を渡り歩き、もう一度転職したい、と考えていた西川は、同じ職場で働いていた赤坂優に「僕は26歳で起業する。一緒にやりません?」と声を掛けられる。
二人は得意とすることが少し違った。そこがいい、と思った。赤坂は事業を興し、大きくしていくのがうまい。対して、西川は組織づくりが得意。共通するのは「どんなことをしてでも目標を達成する」ということ。
BtoCのサービスをつくりたい。海外にも出て行きたい。この二つにこだわり、目をつけたのが、オンライン・デーティング・サービスだった。
「アメリカに数多あるサービスで、成功事例がしっかりとある。日本で流行らないわけがない、と」
共同経営といえば、衝突し、失敗するケースも少なくないが、二人にはちょっとしたルールがあった。たとえば、二人一緒に同じ人には会わない。「同じ人脈を作っている時間があったら、会社のために仕事をしていた方がいいから」。男女で経営していて、気づいたこともある。
「男性の方が繊細なんですよ」
会社を設立したばかりの頃。「経営理念を決めた方がいい」と社員に言われ、CEOの赤坂は焦っていた。なかなか決められず、でも決めなければ、と精神的に追い込まれていく。
「でも、私は『そんなことを考えている暇はない!まだ必要ない』と」
赤坂が精神的に弱っているときは、西川が事業を進める。そんな関係が出来上がっていた。一般論で言えば、男性は不特定多数からの承認欲求があるようにも感じている。でも、西川は有名になりたい、という感情はないのだという。
9月、赤坂が代表を退き、取締役COO兼CTOだった石橋準也が代表に就任。「やっぱり繊細だな」と思う。
「大丈夫、大丈夫!と言うのが私の役割。メンタリティが逆だから良いのかもしれませんね」。“違い”を俯瞰しながら、男性経営者をがっちりと下支えしている。
にしかわ・じゅん◎オールアバウト、サイバーエージェントでWEBプロデューサーを経験した後、2009年に「エウレカ」を共同創業。12年にFacebookを使った恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」、14年にカップル専用アプリ「Couples」をスタートさせる。海外カンファレンスへの参加費用を全額負担するなど、ユニークな社内制度も多い。