新たな売り場の面積は、6万1,000平方フィート(約5,667平方メートル)。完成すれば、現在世界最大を誇るパリの百貨店ギャラリーラファイエットのハンドバッグ売り場の面積を7,000平方フィート(約650平方メートル)上回る。
「世界最大の高級アクセサリーホールをつくることが目的ではなかった。最大が必ずしも最高を意味するわけではない」と、セルフリッジズの買付・販売計画担当セバスチャン・メインズは米ニューヨーク・タイムズ紙に語った。
「だが我々はもう何年も前から新売り場の計画を立ててきた。これまでの全ての取り組み、調査、実験と革新の成果を全て盛り込むには、この広さが必要だった」
セルフリッジズによれば、売り場面積の拡張は、同社にとって過去最大規模の投資となる3億ポンド(約430億円)をかけて行っている店舗改築の一環だ。アクセサリー売り場は現在の3倍、バッグの取り扱い数も3倍になり、その売り場は、1階の総売り場面積の3分の1以上を占めることになる。
オンラインショッピングの伸びに伴い、実店舗型の小売体験には改革が必要となる。「多くのブランドは旗艦店を中心に買い物客を増やしたいと考えている。だが多くの消費者は、旗艦店での買い物は気後れがするし、やや窮屈に感じている」とメインズは言う。「だからセルフリッジズでは、できる限り広々とした空間に豊富な選択肢を揃え、ブランドごとのスペースも広く開かれたエントランスにした」
売り場の設計は、在ロンドン米国大使館を高級ホテルに変身させたデイヴィッド・チッパーフィールド・アーキテクツが担当した。エントランスの天井高がこれまでの3倍で、ネオクラシック(新古典派)の円柱があり、床はホワイトマーブル。中央には14席が円状に配置されたカクテルバー「ザ・ファウント」がある。
高級ハンドバッグのコレクションには、エルメスやシャネルなどのブランドから、地元デザイナーブランドやよりカジュアルなブランドまでが揃えられる。最高価格帯は2万ポンド(約287万円)を上回る見通しだ。バッグのほかにもサングラスやスカーフ、ウェアラブルデバイスなども並ぶ予定で、売り場には最大7万点が展開されるという。
オークション大手クリスティーズのハンドバッグ&アクセサリーの専門家ケイトリン・ドノバンは、「トレンドが見えるニューヨーク・ファッションウィークを見ると、クライアントがより小ぶりなバッグやアクセサリーに引かれているのが分かる。これまでは通常、夜に身に着けるものだった小ぶりのブランドバッグが今では昼夜問わないアイテムになっている」と言う。
だが、大きめの高級ブランドバッグが姿を消す訳ではない。消費者がこれまで以上に数多くの、小ぶりなものを持つようになるということだ。女性たちが、どんな服装にも合う万能バッグ1つを持っている時代はもう終わった。今はさまざまな服装に合わせて、ユニークなハンドバッグやクラッチを持つ時代なのだ。