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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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人生において優れた仕事を成し遂げ、世の中から「成功者」と呼ばれる政治家や経営者、学者や文化人について、興味深い調査結果が報告されている。

その調査とは、これら「人生の成功者」が書いた自叙伝や回想録を読み、その中で、最も良く使われている言葉、最も多く出てくる言葉を調べたものであるが、その結果は、全く意外なものであった。

当初、最も良く使われているであろうと予想された言葉は、「努力」や「信念」といった言葉であったが、この調査の結果、最も多く使われていた言葉は、そうした言葉ではなかった。

驚くべきことに、最も良く使われていた言葉は、「たまたま」「丁度そのとき」「ふとしたことから」。そういった、「偶然の出来事」によって人生が導かれたことを語る言葉が、最も多く使われていたのである。

この調査結果を聞くと、多くの読者の心には、「人生の成功者は、やはり、運が強い」という思いが浮かぶのではないか。

しかし、この調査の結果を深く見つめるならば、その「運の強さ」と呼ばれるものの奥に、「成功者」が共通に持つ、もう一つの資質があることに気がつく。

「人生の出来事に、深い意味を感じ取る力」

すなわち、「たまたま」「丁度そのとき」「ふとしたことから」と形容すべき「偶然」と見える出来事の中に「大切な意味」を感じ取る力。さらに言えば、「自分を導く声」を感じ取る力。それが、優れた仕事を成し遂げ、「人生の成功者」と呼ばれる人々が、共通に持つ資質であろう。

では、我々は、どうすれば、そうした力を身につけることができるのか?

そのことを考えるとき、一つの示唆を与えてくれるのが、分析心理学の創始者、カール・グスタフ・ユングが語った「シンクロニシティ」という現象であろう。

「共時性」や「不思議な偶然の一致」と訳されるこの現象は、例えば、「誰かのことを考えていると、丁度そのとき、その人物から電話がかかってきた」「ある問題について悩んでいると、たまたま喫茶店で隣に座っていた客同士が、その問題に関する話をしていた」「進路について考えていたら、ふとしたことで手にした本に、その進路に関する示唆的なメッセージが書かれてあった」など、誰もが経験したことのある現象であろう。

文=田坂広志

 

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