巨大コングロマリットと合併
この買収によりネットマーブルは韓国最大級のコングロマリットCJグループの目に留まった。同グループは90年代にサムスン帝国から離脱した組織だ。パンは2004年にCJグループのイ・ジェヒョン会長と会談して合併に合意し、ネットマーブルの名前はCJ Internet Companyとなった。
「最初は合併に興味はありませんでしたが、ビジネス拡大のチャンスだと気が付いたのです。従業員にとっても利益になると考えました。韓国を代表するようなビルに移って名前をCJ Internetに変えると、多くの社員が結婚しました」と冗談めかして言った。
パンはその後、Game Hiが開発した韓国で最も人気のあるシューティングゲーム「サドンアタック」のサービスを提供する契約を結んだ。その後、まだ初期段階にあったモバイル市場に参入した。しかし、急激なビジネス拡大には代償が伴った。パンは2006年、健康上の理由から辞任し、経営をCJに任せることにした。「ほとんど休みがなかったため、疲れきってストレスを抱えていました」と語る。
パンは5年間ゲーム産業から離れ、パッシブ投資家として株取引を行っていた。この期間については多くを語らないが、事業への情熱は衰えていなかった。「休業して3年目に入ると、新しいゲームビジネスを立ち上げる準備を始めました。その頃CJに任せた経営が頓挫し、戻ってきてほしいと言われました」
5年間の療養を経て復帰。事業を再生
ネットマーブルは、2007年~2011年に手がけた32のゲームのほとんどが不調だった。ゲーム業界で経験のないCEOが指揮を執っていた。売上の3分の1を占めていたサドンアタックの権利も失っていた。
経営に戻ったパンはモバイルに注力する方針を打ち出し、PCゲームからの撤退を決意した。スマホが急速に普及する中で「これからスマホは単なる電話ではなくなる」と考えたという。Pew Researchによると、韓国のスマホ普及率は世界最高の88%だ。
2014年、中国最大のインターネット企業テンセントがネットマーブルに5億ドル(約570億円)を出資して28%の株式を取得した。現在、パンの頭にはモバイルしかないという。
しかし競争は激しくなる一方だ。特にモバイルのゲーム市場はほぼ飽和点を迎えようとしている。パンは上場によりこの状況を乗り越えようとしている。
「市場のメジャー・プレーヤーに成長し、新しいゲームをコンスタントに手掛けられるように世界中の企業に積極的に出資したいと考えています。アジアでの成功を超え、アメリカに挑戦したいと思っています。アメリカで成功できれば世界のどこに行っても勝てるからです」とパンは語った。