固定観念を打ち砕いた「すし匠」中澤大将との出会い

ザ・リッツ・カールトン・ワイキキビーチに今年9月、江戸前寿司の最高峰「すし匠」初の海外店がオープンした。

ハワイの乾いた風はいつも疲れた体と心を癒してくれる。

今回、仕事で訪れたハワイで大きな収穫があった。江戸前寿司の第一人者である「すし匠」の大将、中澤圭二氏との出会いである。

中澤氏もハワイの風に魅了されこの地に来た。そのゆっくりとした語り口は、まるで哲学者のように鋭く、説得力がある。

「今や築地の魚はブランド化し、半分以上が海外に輸出され、世界の富裕層たちの口に入るのです。どんどん高騰していってそのうち日本人でも簡単に食べられなくなる」と警鐘を鳴らす。

「ハワイなどの現地の魚にも寿司に合う魚は沢山ある。そういう魚を使った寿司を握って、日本に負けない質の寿司をここで出したいです」。

そんな中澤氏も現地に来て準備に数年、店を開けて2週間、悩んでいるようである。設計通りに進まない内装、高騰する雇用手当、思うように取得できないビザ。そして何よりも「日本のうに、こはだはないの?」という、日本から鳴り物入りで来たすし匠に本格的江戸前寿司を要求する声と中澤氏の思いのギャップだ。

それでもリッツ・カールトンの真新しいカウンターで食べた中澤さんが握る寿司は、日本以外では美味しい寿司は食べられないと思っていた固定観念を完全に打ち砕いた。日本産、現地産交互で出された寿司ネタは、全く違和感なく最高の寿司だった。ハワイ産の白身魚も、ワシントン州産のうにも、そしてカリフォルニア米のシャリも。

次に訪れた時も是非現地の寿司を食したい。また応援したい人が一人増えた。

文=高野 真 写真=青木倫紀

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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