台湾で苦戦のウーバー、政府は5億円支払い要請 打開策はあるのか?

ツァイ・インウェン総統 (photo by Ashley Pon / gettyimages)

台湾政府はウーバーに対し、敵対的な姿勢を強めている。3年前のウーバー上陸以来、現地のタクシー業者らは政府に働きかけてきた。税務当局は今月、ウーバーに未納税と罰金の合計425万ドル(約4億7,800万円)の支払いを命じた。

また、台湾交通部はアップルとグーグルに台湾でウーバーのアプリを削除するよう求めた。国会はウーバーの運転手に対する罰金を4,700ドルから世界で最高額の78万5,000ドル(約8,800万円)に引き上げることを検討している。そして政府は、ウーバーが新たに始めたフードデリバリーサービス「UberEATS」 も台湾では違法だとの見解を示した。

しかし、ウーバーにとって、台湾は最も速く成長しているマーケットの一つだ。登録ドライバーは1万人、登録利用者は100万人を抱える。ウーバー台湾のGM、グー・リーカイはフォーブスの取材に「私たちはこのマーケットにとどまり、なんとか事業を続けていく」と語った。

ツァイ・インウェン(蔡英文)総統がハイテク産業のさらなるイノベーションを打ち出しているにも関わらず、台湾はこの分野で出遅れている。台湾は数十年にわたり世界のテックハブだったが、今やその多くがより低コストの中国に吸い取られている。

ウーバーは公開書簡でこう記した。「台湾のツァイ総統は、台湾を“アジアのシリコンバレー”と標ぼうし、デジタル大臣を指名した。スタートアップ企業が成功するために、テックフレンドリーな政策環境を構築すると約束したが、その約束を破ろうとしている」

さらに、罰金の引き上げとアプリの削除要請は「ウーバーから収入を得ている百万人以上の台湾市民の生活を脅かすものだ」と批判した。

ウーバーと政府は妥協点を見つけられるか

台湾政府は本格的にウーバーを締め出す手続きはとっていない。多くの台湾国民に収入の道を与えたウーバーを追い込めば、ツァイ総統は選挙でしっぺ返しを受けかねない。台湾メディアの中央社によると、ツァイ政権は5月20日の就任以来、この問題にどう対処するかを考えあぐねている。台湾交通部長はウーバーに対し、タクシー業界と折衝を図るように求めたという。

台湾にはウーバーに関わる問題を一手に引き受ける政府部門が無いため、法的措置も一貫性を欠いている。高速道路を管轄する当局の職員は、「ウーバーは台湾の法律と協調したいと言ったが口だけだ。事態はますます難しくなっている」と述べた。

ウーバーと政府は、話し合いを続けており、法律に詳しい関係者は「法的な複雑さはあるが、歩み寄りは可能だ」と見る。

台北の法律事務所特別顧問、クリストファー・ノイマイアは「ウーバーは革新的なビジネスモデルを生み出し、既存業界を脅かし、古い法律をどう解釈するかという問題も引き起こしている」と前置きし、「当事者たちは自分の立場を主張しているが、生産的な議論も行われており、最後には賢明な妥協に達すると信じている」と述べた。

編集=上田裕資

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