LINEを襲う「成長の限界」 混迷のアジア、メッセージアプリ戦線

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11月上旬、フェイスブックが“アジア版スナップチャット”と呼ばれるアプリ「SNOW」の買収に失敗したとの報道が流れた。

テッククランチの記事によると、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグはSNOWの運営元、韓国ネイバーの李海珍(イ・ヘジン)会長に自ら電話をかけたが、李はこれを断った。ネイバーは2億1,800万人の月間アクティブユーザーを誇るメッセージアプリLINEを保有し、今夏のIPOで11億ドル(約1,250億円)を調達している。

SNOWはニューヨークタイムズが夏に記事を掲載し、英語圏でも知られるようになった。ダウンロード数は8,000万を超え韓国や日本のほか、スナップチャットが禁止されている中国のティーンにも人気だ。

しかし、SNOWに関してはその内容が他アプリのパクリではないかという声も強い。動画デコアプリを開発するSeerslab社は同社のアプリ「Pixbee」と「Lollicam」からネイバーがアイデアを盗んだと主張する。同社のマイケル・チョンCEOは「ネイバー幹部は従業員に、我が社のアプリをマネするよう指示を出した」と語る。

Seerslabは2014年12月にPixbeeのベータ版をiOS向けに公開。リアルタイムの動画フィルターを搭載し、のちに顔追跡ステッカーも追加した。その後2015年9月にネイバーはSNOWを発表している。

Seerslabの主張によると、同社がアプリに投入したスタンプは4日後にはSNOWが模倣して導入していたという。SNOWはSeerslabが持つ特許を侵害しているとも主張する。

パクリで成長を遂げたSNOW

「1からアイデアをひねり出している我々としては許しがたい行為です」とチョンは語る。Seerslabには4人しかデザイナーがおらず、大手のネイバーに比べれば非力だ。ネイバーはこの申し立てに対し、「Seerslab社のアプリのスタンプはもともとLINEがデザインしたものだ」と主張している。

Lollicamのユーザー数は現在約600万人。収入源は野球場などと協力して開発した特定の場所で使える有料スタンプだという。チョンは「12月に大きなアップデートを行う予定ですが、SNOWにまたマネされるのではと懸念しています。ネイバーは他の弱小企業は自分たちの踏み台としか考えていないようです」と述べた。

しかし、乱立するメッセージアプリの世界で、各アプリの内容は非常に似通ったものになっている。特にSNOWはスナップチャットと見分けがつかないほど似ている。だからこそフェイスブックはSNOWの買収に動いたのだろう。買収が成功していれば、フェイスブックはアジア圏で大きな前進を遂げていたかもしれない。
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編集=上田裕資

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