スピーゲルらはスナップチャットを瞬く間に成功に導き、フェイスブックが脅威とみなす存在にまで成長させた。フェイスブックによる30億ドル(約3,400億円)での買収提案を断ったことでスピーゲルは伝説的存在とまで言われるようになった。当時、フェイスブックの買収提案を断ったことは正気の沙汰とは思えないほど傲慢な行為だと見られていた。
しかし、その決断はのちにスナップチャットを成功へと導いた。買収のオファーがあった当時、同社はビジネスモデルも確立していなかったが、その後すぐに打ち出した広告モデルが今となっては大きな収入源となっている。そして同社はニュースに興味のなさそうな若者たちに対し、ニュースを簡単に読んでシェアできる機能を提案した。さらに若者が利用しやすい支払いスキームや新機能のMemoriesを追加したほか、カメラ付きメガネのメーカーまで立ち上げた。
ティーンの心を捉えた洞察力
スナップチャットがここまで成長できたのは偶然などではない。ユーザー層やユーザー同士の人間関係を熟知し、ロードマップを丹念に描いた結果に違いない。
スナップチャットは、ティーンというとらえどころのない層を相手とする企業らに非常に魅力的な広告媒体となり、金の生る木へと成長させた。スピーゲルはよくいるオタク系のスタートアップ創業者ではない。裕福な家庭の出身で何不自由なく育ち、ソーシャルライフは極めてアクティブで今でもパーティー好き。数々の美しい女性と交際し、現在はスーパーモデルのミランダ・カーと婚約中で、21億ドル(約2,380億円)という巨額の資産を保有している。
スナップチャットの消えるメッセージというコンセプトは、フェイスブックが何度も模倣しようとして失敗している。フェイスブックは傘下のインスタグラム内のストーリー機能で、ようやくその模倣を成功させることが出来た。
スナップチャットの台頭が興味深いのには2つの理由がある。1つ目は、彼らのアイデアを実現させる力だ。テクノロジーの分野ではアイデアが過大評価され、実行力が過小評価される傾向があるが、素晴らしいアイデアを持っていてもそれをプロダクトとして実現出来なければ意味が無い。
2つ目に、まだ20代にしてこれだけの実行力を持っている創業者は珍しい。上場を予定しているスナップチャットの価値は大企業と肩を並べる200億ドル~250億ドル(約2兆2,660億円~2兆8,330億円)とも見られている。同社にはもう怖いものはないだろう。繰り返しになるが、スナップチャットをここまで成長させたのはアイデア自体ではなく、アイデアを形にする力なのだ。重要なのは何をするかではなく、どうやってそれをプロダクトとして成立させるかなのだ。