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こうしたデータ分析は間もなく、遊説先、資金調達、広告、そして演説の内容まで、選挙運動のあらゆる側面を左右するようになった。資金調達には機械学習を活用し、効果が薄い広告はすぐに取り下げ、有効な広告は多用。個々の有権者に合わせた広告を1日当たり10万回も流した。

トランプ陣営は最終的に、4か月で2億5,000万ドルの資金調達に成功したが、その大半は小口の資金提供者からによるものだった。

選挙戦終盤までには、クシュナーが作り上げたシステムは、その高い利ざやと最新の有権者データを基に、潤沢な資金とその使用先に関する知見を生み出すようになっていた。激戦州のミシガンとペンシルベニアがトランプ側に傾きつつあることが分かると、クシュナーはここぞとばかりに、ターゲティングを駆使したテレビ広告や、土壇場での選挙集会、そして数千人のボランティアによる戸別訪問や電話作戦を解き放った。

今後は「ホワイトハウスの黒幕」に?

選挙戦がほぼ終わりを迎えるまで、クシュナーはこうした作戦を外部の誰にも知られることなく遂行した。クリントンが得票数では200万票以上のリードを付けながら、なぜ選挙人獲得数でトランプに惨敗したのかという謎は、これで少しは解決したのではないだろうか。選挙戦全体を包んでいた感情が恐怖と怒りだったとしたら、最後に決定的な役割を果たしたのはデータと起業家精神だった。

「ジャレッドは、従来メディアの関係者が分からない方法でネット世界を理解していた。彼はわずかな資金しかなかった選挙対策チームを、新たなテクノロジーを使って立て直し、勝利した。すごいことだ」。グーグルのシュミットは語る。

選挙戦での功績と、トランプからの厚い信頼によって、クシュナーは今後少なくとも4年間にわたって国の最上層部における有力者の一人となるだろう。「私が知る限り、歴代大統領には全員、直感的・構造的に信頼を置く人物が1人か2人いた」。トランプと数十年にわたり親交を持ち、現在は外交政策顧問を務めているヘンリー・キッシンジャー元米国務長官はこう語る。「ジャレッドはそうした存在かもしれない」

だが、彼が正式にトランプ政権に参加する可能性は低い。米国では縁故採用禁止法により、大統領の親戚が政権入りすることが禁じられている。メディア各社は、新政権がクシュナーをどうにかして政権入りさせる方法を模索しており、無給の顧問に就任させるとの案もあると報じているが、それも法律違反に当たる可能性があるだろう。

だが正式な役職名や報酬があろうとなかろうと、大統領が自分の望む相手の意見を聞くことを禁止する法律はない。これまでクリントン側につきトランプを非難してきたIT業界の首脳や起業家らは今後、クシュナーを仲介役として利用するだろうし、トランプも彼を頼り続けるに違いない。

メディア王のルパート・マードックはこう語る。「彼は常にホワイトハウス内にとどまるだろう。向こう4年あるいは8年にわたって、強力な意見発信者となり続ける。副大統領に次ぐ力を持つかもしれない」

翻訳・編集=遠藤宗生

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