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2016.12.06

競馬文化を未来につなげる、馬主にしか味わえない至福

Courtesy of JRA


「世界一の馬主」として知られるドバイの首長にしてアラブ首長国連邦首相のシェイク・モハメド(英語名)は、ケンブリッジ大学に留学中に競馬場の柵にもたれかかって馬を見続け、「俺は世界一の馬主になる」と決意したという。英国の馬文化そのものが彼に強烈な文明的な衝撃を与えたに違いない。

その点、日本では明治の陸軍の近代化の過程で軍馬が導入されたが、馬の扱いは農耕馬の域を出なかった。「馬の育成よりも人材の育成が大事」と考えざるをえなかった。1878年のパリ万博だったか、「日本の駿馬だ」と自信を持って出展したら、黒山の人だかり。「なんて滑稽な馬だ」と嘲笑された。さもありなんなのである。

しかし現在のJRAは、世界で最も成功した競馬ビジネスモデルを創りあげた。JRAの1年間の売り上げは2兆5,000億円あまりで、世界の中でも類を見ない規模である。これほど競馬を楽しめる、競馬が楽しいと思うファンを創造した功績は大きい。

現代の競馬につながる競馬のルールやビジネスモデルは、18世紀の半ばに萌芽を見る。英国のバンベリー卿とダービー卿という二人の馬主の努力があったからこそ、競馬は公正で誰もが楽しめるものになった。また「オークス」や「ダービー」など、名レースに冠される名もなかったであろう。

そもそも競馬は、馬に戦車をひかせる戦車競走を始まりとするが、騎手が乗っただけで対決を始めた当初は、馬主が騎手を務めていた。そこには、20世紀の歴史家ホイジンガが名著『ホモ・ルーデンス』で書き残した「遊技は文化よりも古い」という原風景が見えるような気がする。

最近はクラブに出資して馬主気分を味わったり、馬主でも共有で1頭の馬を保有するケースがあるが、私にもし資金があり、馬主になるのであれば、やはり一人で持ちたい。責任ある馬主となることで、競走馬の生産からレースに至るまで競馬に関われる喜びがある。これがどれほどの至福か! 古くから営々と築かれてきた文化を、自らも一人の担い手として未来につなげるのである。

馬主は自分の持ち馬をレースに出すことにとどまらず、競馬文化にも貢献するものなのである。近代競馬のバンベリー卿やダービー卿などの活躍は、まさに文化と風土を創造しようとするものだったのだ。それが羨ましくもある。

本村凌二(もとむら・りょうじ)
1947年生まれ。東京大学大学大学院総合文化研究科・教養学部教授を経て現在、東大名誉教授。早稲田大学国際学術院特任教授。専攻は古代ローマ史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞などを受賞している。

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個人馬主とは、個人を馬主として登録するものです。馬主全体の約85パーセントを占めています。馬主登録には審査の承認を経る必要があります。

〈馬主登録ガイドブックに関して〉馬主登録ガイドブック発送事務局 03-3545-3932
〈馬主登録に関するお問い合わせ〉日本中央競馬会 競走部 馬主担当課 03-3591-5251
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●個人馬主登録 1)日本中央競馬会競馬施行規程(以下「施行規程」といいます。)第7条第1号~第13号に定める事項のいずれにも該当しないこと。2)今後も継続的に得られる見込みのある所得金額(収入金額ではない)が、過去2ヵ年いずれも1,700万円以上あること。※所得金額には、一時的な所得および競馬に関する所得(地方競馬賞金等)は含みません。3)資産の額が7,500万円以上あること。※資産に含まれるのは、ご本人名義の不動産、預貯金、有価証券(投資信託、債券等を含む)です。なお、保険証券、ゴルフ会員権、海外に所在する不動産、書画骨董等は資産に含みませんのでご注意ください。また、負債がある場合は資産額からその分を差し引いて評価します。


text by Haruhito Funaki

この記事は 「Forbes JAPAN No.30 2017年1月号(2016/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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