シボレーを配下に置くゼネラルモーターズ(GM)はこれまで環境にやさしいイメージを中国で打ち出そうとしており、ガソリンを大量に消費するピックアップトラックの投入は適切でないと考えてきた。同じ理由から同社はFシリーズの中国への投入も見送ってきた。
GMの方針転換の理由はキャッシュだ。中国のバイヤー側はピックアップトラックを欲しがっていたがメーカーはこれを拒んでいた。そこでグレーゾーンの取引を行なう並行輸入業者らが台頭し、米国のディーラーから直接、買い付けを行なった。これが無視できない規模に成長し、GMやフォードらは渋々、公式ルートからの販売に踏み切ったのだ。
しかし、GMの対応は遅すぎたのではないかという懸念もある。ドナルド・トランプが次期大統領に決まった今、トランプが中国製品に45%の関税を課す恐れも高まっている。
中国はもちろん、これにやり返す構えだ。中国政府は政府運営の「人民日報」の国際版「環球時報」の紙面で彼らの主張を展開した。「トランプは中国に貿易戦争を仕掛けるのか?」と題した記事で、匿名の執筆者は次のように述べている。
トランプリスクは回避できるか?
「トランプが中国からの輸入製品に45%の関税をかけるのなら、中国は報復措置に出る。中国政府は米国のボーイング社の代わりに欧州のエアバスの航空機を購入する。米国の大豆やトウモロコシの輸入も中止する。さらに、米国で学ぶ留学生の数も制限する」
アメリカ車の販売は大きな打撃を受けることになる。中国には二種類の米国製自動車が存在する。その一つは中国内で製造されたアメリカ車。もう一つは米国からの輸入車だ。
前者は上海GMと長安フォード汽車が製造を手がけ、50%は中国側が所有するジョイントベンチャーだ。数万人の中国人を雇用しているため政府がこれを敵視することは無いだろう。
打撃を受けるのは米国から輸入される車両だ。シボレーの場合、中国で販売する米国製車両は十台に一台にしか過ぎず、さほどの打撃とは言えない。しかし、45%の関税は米国産のピックアップトラックの売上には大きく影響する(同時にグレーゾーンの輸入車にも大きな打撃を与えることになるのだが)。
シボレーの社員は筆者に、さしあたり現在のプランを前進させてゆくつもりだと語った。「米国の新政権の方針がはっきり固まるまでの間は」と。つまり、中国消費者が、彼らが待ちわびた米国製V8ピックアップトラックを手に入れられるかどうかは、政府の高官らの協議の行方にかかっている。