アップルはiPhoneの組み立て工程のほぼ全てを中国のフォックスコン(Foxconn)に任せている。トランプの主張通り45%の関税を中国での製造品に課すとすれば、米国はコスト面から考えて有利な場所になるだろう。
しかし、ここには盲点がある。アップルがトランプの関税から逃れるのは簡単だ。中国以外の国に製造拠点を移せばいい。もっと安い費用で製造が可能な国は他にもあるのだ。
市場調査企業カナリス(Canalys)のティム・クーリングは次のように言う。「トランプの考えは間違っている。実際のところ中国は今やエレクトロニクス製品の製造拠点としてはコストが高い国だ。他の国に頼んだほうが安く製造できる」
その一つに挙げられるのがベトナムだ。サムスンはスマートフォンの三分の一以上を東南アジア諸国で生産しており、そこでの賃金は中国よりも安い。経済メディアのエコノミストは昨年、中国の工場労働者の平均日給が27.5ドルなのに対し、ベトナムでは6.7ドルだとリポートした。
アップルは既にベトナムでの地盤を固めつつある。今年5月にフォックスコンは子会社のFIH Mobileを通じ、ベトナムにあるマイクロソフトのスマートフォン工場を買収した。現在、中国の深センにあるフォックスコンのiPhone製造部門は、いつでもベトナムに移すことが可能なのだ。
iPhone向けのカメラモジュールや液晶パネルを製造するLGも、既にベトナムに工場を持っている。アップルは実際のところサプライチェーンをまるごとベトナムに移すことも可能だ。
中国以外もターゲットになる?
しかし、トランプの関税プランが中国以外に及ぶ可能性もある。「中国に限らず、為替操作や違法な子会社経由の取引を行なう国も対象になる」と、トランプの選挙キャンペーンで政策アドバイザーを務めたジョン・ナバロ(John Navarro)は7月のロサンゼルスタイムズの紙面で述べた。
「中国の中央銀行は元を意図的に引き下げている。そのことで中国の輸出を促進し、米国の対中貿易を不利な条件にしている」とナバロは主張する。
「このようなあからさまな為替コントロールが、米国の3,650億ドル(約40兆円)に及ぶ対中貿易赤字を生んでいる。公正な為替レートの元では起こり得ない事態だ」