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2016.11.21

トランプの「iPhone関税」は実現不可能 アナリストらが指摘 

Photo by Christopher Furlong/Getty Images


しかし、ベトナムはトランプの関税基準には当てはまらない。米国政府の資料によると、ベトナムとの間の貿易赤字は309億ドルに過ぎず、そのほとんどはアパレル業や農業からのものだ。

トランプはアップルの中国でのiPhone生産に罰を与える以外にも、米国内での投資を高め、雇用を取り戻す手段はある。それが減税だ。

法人減税は有効手段か?

現在、米国ではグローバル企業が海外で得た利益は、本国に送金するまでは課税しない法人税制があり、企業が海外に溜め込んだ利益は2兆6000億ドル(約283兆円)に上っている。

トランプは企業の海外利益への課税税率を35%から10%に引き下げることを提案した。このことは、2,000億ドル(約22兆円)の利益を海外で貯め込んだアップルにメリットとなる。この策はトランプが掲げる法人税率引き下げの一貫で、現状の先進国で最も高い税率の35%からタックスヘイブンの香港並みの15%まで引き下げることを計画している。

実はトランプがアップルに米国内でiPhoneを作らせることは、単に国内の雇用を創出すること以上の意味を持つ。それはバラク・オバマに出来なかったことを成し遂げたいという思いだ。オバマも2011年に、同じことをスティーブ・ジョブズに懇願したことがあった。ニューヨークタイムズの記事によると、ジョブズはこう返事したという。「仕事は米国には戻ってこない」

オバマにもトランプにも、アップルに米国でのiPhone生産を強要は出来ないとしたら、打てる手は減税ぐらいだろう。減税は少なくとも、米国を今より企業に優しい国にする。他の国に貿易戦争を仕掛けるよりはましな手段だ。

冒頭のカナリスのクーリングは次のように話す。「アップルが中国以外の国に生産拠点を移すとしたら、トランプがそれに対抗する手段はほとんど無い。出来ることがあるとするならば、それはアップルの製品全てに関税をかけることぐらいだ」

編集=上田裕資

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