2006年に始まった同レポートは、144か国を対象に教育、経済活動、健康や政治参画における男女格差の調査し、結果をまとめたもの。同書によると男女格差が最も小さいのはアイスランド、フィンランド、ノルウェーとスウェーデン。アメリカは、法的な支援や啓蒙活動が行なわれているにもかかわらず45位で、2015年の28位から大きく転落した。
賃金格差が最も大きいのは、金融サービス業界だ。法律関連の情報サイト、ロー・ドットコム(Law.com)に掲載された別の調査によれば、女性の金融マネージャーの給与は男性の給与の67.4%。個人向け投資顧問では61.3%だった。
仕事における男女差
女性政策研究所(IWPR)は、賃金格差は「職業における男女差別」が理由であると指摘し、「この10年で男女の仕事の統合はほとんど進んでいない」と主張する。つまり、幹部職に女性が少ないことが、賃金格差がなかなか縮まらない大きな理由だ。
そしてもう1つの理由が、多くの女性がキャリアの途中で、しかも出世する可能性が最も高い時期に仕事を辞めてしまうことだ。
このキャリア半ばの時期は、女性にとって子育てが最も大変な時期でもある。仕事と家庭、母親業の掛け持ちは大変で、こなしきれないことが多い。こうしたなかで、賃金格差解消の鍵が「家庭」にあることを以下の報告書が示している。
National Parents Organizationの報告書では、職場での男女平等を支持し、男女間の賃金格差を解消するため米国の家庭裁判所に対して、共同親権制度を採用するよう促している。アメリカで離婚訴訟で親権が争われる場合「単独親権モデル」が全体の90%を占めていると主張し、キャリアを追求したり、給与の高い仕事を維持する上で、独りで子育てをすることが制約になっていると指摘している。
ピーターソン国際経済研究所による報告書では、驚くべき結果が示されている。91か国の上場企業約2万2,000社を対象に調査を実施した結果、父親への育児休暇制度と女性幹部を増やすことの間に、統計学的な相関関係が示されたという。相関関係が認められたのは、母親の育児休暇ではなく、父親の育児休暇だったのだ。
その理由として考えられるのは、企業が「建前上」女性の幹部起用を支持している一方で、家庭と仕事の両立をサポートする体制が整っていないことだ。フレックスタイムや在宅勤務は、まだ当たり前の選択肢ではない。