アッパー・ウエスト・サイドにある「トランプ・プレイス」のうち、番地が140、160、180の3棟は今週、それぞれの番地に「リバーサイド・ブルバード」が併記された名称に変更される。改称を求める住民たちの活動には614人が賛同、署名していた。
10月から署名集めを始めた住民の女性は当初から、トランプに対する拒否感をあらわにしていた。「トランプの名を捨てよう」と銘打って活動を開始した彼女は、女性や移民、身体障害者を傷付けるようなトランプの発言を非難。自分たちが支払う家賃がトランプの資産を増やしていることへの嫌悪感も示していた。
ただし、合計1,325戸あるこれら3棟は次期大統領の名を掲げているものの、2005年以降の所有者はトランプではなく、シカゴに本社を置く不動産投資信託会社のエクイティ・レジデンシャル(EQR)だ。
EQRと当初の所有者であるトランプ・オーガナイゼーションが交わした売買契約には、譲渡後も一定期間は建物名を変更しないこととする内容が含まれていた。だが、その契約期間はすでに満了しており、改称はEQRの意思で可能な状態だ。情報筋によると、署名集めが開始されてすぐに同社が変更に応じなかったのは、政治的な問題として扱われることを避けるためだったとみられる。
EQRは11月15日に公開した発表文の中で、「当社はニューヨークのトランプ・プレイス内に所有する物件3棟について、名称変更に向けた手続きを進めている。大統領選とそれに向けた選挙活動で“トランプ”の名は政治化したが、上場会社であるEQRが政治に関わることはない」と述べている。
トランプが所有しない不動産に、その名が掲げられていることは珍しくない。ただ、現在のところは金色の「トランプ」のロゴの取り外しに急いでいる物件所有者はいない。看板だけでなく、スタッフの制服などにも記されているロゴの変更にかかる費用も、その理由かもしれない。また、変更が契約違反に当たる物件もあるかもしれない。
トランプ自ら変更も
トランプ・オーガナイゼーションは、マンハッタンだけでも少なくとも6棟ほどの建物を所有しているが、これらの名称が近々変更されることはないとみられる。一方、トランプ自身が手掛ける事業の中には、その名を変えたものがある。トランプ・ホテルズは今年9月、ブランド名を名字そのものではなく「名門の子孫」を意味する「サイオン(Scion)」に改称すると発表している。