「真実を写す」のが日本人らしさ -今、東京で写真を見る/集めるということ

石井孝之氏。タカ・イシイギャラリーにて。 Photograph by yOU(河崎夕子)


――日本で写真のコレクターは増えていますか?

確実に増えていますね。写真技術がますます身近になり、現代美術のアーティストも表現のツールに写真を使うことが増えました――ペインティングなどと同じ感覚で写真が使われるので、現代美術をコレクションしている人は写真を買う機会が増えたと思います。

世代の違いももちろんありますよね。蜷川実花さんなど、写真を使って表現する作家って比較的に若いじゃないですか。コレクターも、若い世代は写真をアートのひとつとして抵抗なくすんなりと受け入れていますね。 反対に、昔からの写真専門のコレクターは現代美術を買わない、という不思議な傾向もあります。「写真は写真だ」という「頑固」な人――そういう人、好きなんですけど。

写真のコレクションって、切手や古銭とかの収集の世界に近いような感覚もあるのかなと自分なりに何となく解釈しているんですけど(笑)。銀塩写真は骨董的な価値がますます高くなってきていますし。

でも、写真が撮られた当時にプリントされた「ビンテージプリント」の価値は、確かにあるんですよね。写真家が被写体に抱いた感情みたいなものが、無意識的に表れると私は思うんです。

今、写真は表現の幅がとても広くなってきているので、面白くなってきたと思います。

――世界の中で、日本の写真の傾向を挙げるとしたら?

去年2015年の4月に、ニューヨークで複数の日本人写真家の展覧会やシンポジウムを開催した、「日本の写真」をテーマにしたフェスティバル("Shashin: Photography from Japan)では、「フォトグラフィ」ではなく「写真」という言葉がそのまま使われていました。

「写真」って「真実を写す」と書くじゃないですか。西洋の「フォトグラフィ」の本来の意味は「光の絵」。だから、意味としたら「光画」なんでしょうけど、日本では「写真」という言葉のほうが定着しました。

「写真」という言葉からは、もう少し内面的なものを追求している感じがして、日本人っぽい。昔から、日本の写真家は「写真」を意識しながら撮っているようなところにおもしろさを感じますね。

アートフォトトウキョウ―エディション“ゼロ”
ART PHOTO TOKYO -edition zero-
http://artphototokyo.com/

茅場町共同ビルディング
中央区日本橋茅場町1-6-12
11月18日[金]・19日[土] 12:00 - 20:00
11月20日 12:00 - 17:00(最終入場は閉場の30分前)
※掲載情報はすべて2016年11月15日時点のものです。

構成=辺見海

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