そして、ハーマンはここ2年の間に、この分野に関連したイスラエルのスタートアップ2社を買収している。モバイルソフトウエア管理会社のレッド・ベンド・ソフトウエア(Redbend Software)と、コネクテッドカーの車載ネットワーク向けのサイバーセキュリティー・システムを手掛けるタワーセック(TowerSec)だ。
スマートフォン市場の成長が全体的に鈍化し、より安価な製品を提供する中国メーカーなどが台頭する中で、サムスンは市場シェアを縮小している。そのサムスンにとってハーマンを手中に収めることは、これまでに開発してきた携帯電話向けディスプレーやメモリーチップ、プロセッサーなどに新たな販売機会を得ることにもなる。
一方、サムスンがこれまで、同じ韓国のLGグループを競合相手として意識してきたことは間違いない。LGも自動車分野での事業拡大を目指してきた。ゼネラルモーターズ(GM)と共同で次世代電気自動車「シボレー「ボルト EV」の開発・製造に取り込むLGは、同モデルに必要となるバッテリーやモーター、パワーエレクトロニクス装置のほか、温度調節やディスプレー、インフォテイメントなどのシステムを提供している。
名誉挽回につながるか
サムスンはハーマンの買収によって、傷付いた自社ブランドの名前に頼ることなく、コネクテッドカー市場に参入できることになる。買収が完了すれば、ハーマンのシステムにはサムスンが製造する内部部品が使用されるようになるはずだ。
スマートフォン市場におけるサムスンの名誉挽回には、しばらく時間がかかるとみられる。だが、コネクテッドカー分野での事業が、埋め合わせをしてくれることになるだろう。