サムスンが新たな事業分野に進出するにあたって傘下に収めるには、ハーマンは最適の企業だといえる。ますます飽和状態が進むスマートフォン市場とは異なり、ハーマンが主に手掛ける自動車関連の分野は、向こう10年間に大幅な成長が見込まれているためだ。また、両社には重複する既存の事業部門がほとんどない。
ハーマンの売上高は、およそ70億ドル。そのうち約70%を占めるのが自動車関連製品となっている。どのモデルの車であれ、オーディオ機器をはじめとするハーマン製の装置やソフトウェアが搭載されている確率はかなり高い。また、ハーマンは自社ブランドの製品以外にも、コネクテッドカー向けのハードウェアを数多く生産している。
米国市場では現在のところ、新車にテレマティクスシステムが搭載される割合は40%以下。そして、その他の市場における普及率はさらに低水準だ。しかし、米調査会社ナビガントリサーチによれば、このシステムは10年後までに、北米と欧州ではほぼ全ての車に搭載されるようになる見通し。アジア太平洋地域でも、普及率の大幅な上昇が予想されている。
これは、自動車メーカー各社が新たなサービスの提供を目指していることによるものだ。各社は自動車が自ら駐車スペースを探す技術や、故障修理、メディアストリーミング、オーバージエア(OTA)ソフトウエア・アップデートなどを行う技術の実用化を進めている。一方、プラグインハイブリッド車はすでにテレマティクスを搭載しているものが多い。すでに、自動車がバッテリー残量や充電ステーションの場所を教えてくれたりするサービスなどがある。
テレマティクスへのさらなる期待
テレマティクスは向こう数年の間に、急成長を見せているもう一つの分野、車車間・路車間通信(V2X、Vehicle to Everything)との一体化が進んでいくとみられている。