海外事業を推進する「ヨックモック」三代目に聞く、アイデアの源泉

藤縄武士社長(Photo by yOU)

「お手土産といえばヨックモック」。そんなイメージが根強いが、いまや中東でも大人気という。創業者の孫として、海外事業を推進してきた藤縄武士社長に聞く、クリエイティビティの源泉とは。

ヨックモックは祖父が創業した会社です。祖父は幼いころより兄の立ち上げた「藤縄商店」で菓子販売を手伝っていたのですが、折悪く太平洋戦争が勃発。終戦後にチョコレートメーカーとして再出発しました。

その後、洋菓子業界で生き抜く方法を模索していた祖父は、1969年5月の欧州視察の際にラングドシャというクッキーに出会ったことで新商品「シガール」のアイデアを思いつきます。同年8月、百貨店向けの菓子販売会社として初代ヨックモックを設立。社名は、祖父がホスピタリティあふれるおもてなしに感動したスウェーデン北部の町「JOKKMOKK」にちなんでいます。

家業を継ぐことに関しては、幼いころから祖父に「三代目」と呼ばれ(笑)、なんとなくそんな思いもありましたが、中・高時代に全寮制の学校で多くの帰国子女と出会い、外国への憧れが増してしまって。大学卒業後は商社に入社し、2年のアメリカ駐在も経験しました。ヨックモックに入ったのは34歳のころです。

入社して感じたのは、当然メーカーなので商品開発から日の目を見るまでのプロセスが、商社に比べると非常に長く、一つひとつが重要なこと。単品350円であろうが、5,000円のセットであろうがそれは同じように時間をかけるわけです。時代に沿ってうつろいゆくお客様の期待や想定を超え、驚きや感動をお届けする、そこは非常にクリエイティビティを求められるところだと感じます。

そのクリエイティビティを活性化するためには、あくまで私自身の場合ですが、少し満たされない、何か物足りない環境にあえて身を置くようにしています。

旅行の際も、インフラの整った国や地域よりも少し寂れた場所に行く。そうすると、普段は当たり前と思っていたものが「こんなに便利だったのか」という発見があります。

何か購入するときも、最高級のスペックのものは買わないようにしています。オリジナリティとは何か、その源泉を確認できますから。あとは街中を歩いたり、さまざまな方からお話を伺ったりすることで情報をインプットし、人との対話を通してアウトプットすることで自然にアイデアとして集約されていく実感があります。
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構成=堀香織

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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