ビジネス

2016.11.24

会社の未来をつくる「ネットワークの築き方」

(左)野村不動産 新規事業戦略部門・刈内一博(右)慶應義塾大学大学院特任教授・小杉俊哉 (photograph by Mizuaki Wakahara)


小杉:一見関係のなさそうなネットワーク同士をつなげることで、より広大なネットワークをつくリ出す刈内さんの存在は、まさに「ネットワークのくさび」です。刈内さんはその役割を戦略的に担うことで、自分が中心となったネットワークを築くことに成功しているのでないでしょうか。

刈内:イントラプレナーは、社外ネットワークを自社へ活かして初めて価値が生まれる存在。「ネットワークのくさび」になることが、自社への貢献度を高めると考えています。今では、社内の様々な部署から「このプロジェクトに適した人を紹介してほしい」と相談を受ける機会が多くあります。

小杉:社外ネットワークを自社の新規事業を促進させるリソースと活用し、価値を生み出す刈内さんは、まさしくイントラプレナーそのもの。今後は、どんな人材を目指していきますか。

刈内:例えるなら、“たんぱく質のような人材”です。会社には「どう成果を上げるか」というHOWを問われる“炭水化物人材”が、明日の活力を得るために必要です。ただ、従来の方法が必ずしも通用しない未来には、彼らだけでは対応できないはずです。そこで、私はたんぱく質のように10年後の大きな体を作れる人材を目指しています。

小杉:HOWを知っていれば、短期的には確実に収益を上げられますが、その方法論が陳腐化してしまうこともあります。そこで、イントラプレナーのように、WHATを考え、価値を生み出すことのできる人材こそが、これからの大企業には必要不可欠です。

ただ現状では、刈内さんのいう“たんぱく質人材”の価値は、長期的な視点を持つ経営層には理解できるものの、日々の結果を問われる中間管理層では評価しきれないのも事実です。

刈内:現在の大企業は、構造的に“炭水化物人材”向けに制度設計されているため、イントラプレナー的な働き方はなかなか理解されにくい面があります。大切なことは、会社組織の構造的ジレンマに対する冷静な分析と“炭水化物人材”への敬意や相互理解で、この点においてはアントレプレナーを凌ぐスキルが求められると思います。

一方で企業側には、潜在的な“たんぱく質人材”を育み、彼らの内発的動機を経営資源として活用するための”イノベーション特区”のような仕組みが必要ではないでしょうか。

小杉:イントラプレナーを「特別な人材」ではなく「誰もが目指せる新しい会社員像」にする鍵は、社内の制度変革にあります。自由に活動できるシステムと刈内さんのようなロールモデルとなる人材─今後、大企業の中にこの2つが揃い、イントラプレナーが増えることに期待しています。


刈内一博◎1978年生まれ。筑波大学大学院修了。野村不動産で新規事業戦略部門に従事。共著『新世代トップランナーの戦いかた 僕たちはこうして仕事を面白くする』(NHK出版)。NHK Eテレ「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」論客出演等。

小杉俊哉◎1958年生まれ。早稲田大学法学部卒。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修了。現在、慶應義塾大学大学院特任教授等を務める。著書に『起業家のように企業で働く』(クロスメディア・パブリッシング)等。

小杉俊哉=インタビュアー 山本隆太郎=構成

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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