「沈みゆく巨艦」から大胆な構造改革を経てよみがえった日立製作所。さらに“次の一手”として「日立の次の100年をつくりたい」(東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO))と2016年4月、21年ぶりに組織形態を抜本的に変えた。従来のカンパニー制から顧客セグメント別に構成する12のフロントビジネスユニット(BU)と、新たな武器、IoTプラットフォーム「ルマーダ」を展開し、フロントBUを横串でサポートするBUなどを置く体制に再編。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)をはじめとした世界のIoTジャイアントに対抗するために─。そんな「非連続の改革への挑戦」を支えるのが、同社執行役専務CFOの西山光秋だ。
─戦い方を変え、組織の構えを変革した意図は。
7,873億円の純損失を出した2008年度の翌09年度から移行したカンパニー制はターンアラウンドには良かった。各カンパニーが、責任を持って業務改善する、あるいはリストラクチャリングするという意味では非常に効果があり、営業利益率6%とそこそこ利益は出るようになった。
ただ、やはり欧米ライバル企業と比べると“まだまだ”。営業利益率10%以上にする成長戦略を描く場合、カンパニー制では限界がある。だからこそ、制御と運用によるOT(オペレーショナル・テクノロジー)とIT(インフォメーション・テクノロジー)を持ち、プロダクト、システムを提供できるという、我々の強みを活かして、共通プラットフォームを開発することが差別化要因になる、と考えた。
そこで開発したのがIoTプラットフォーム「ルマーダ」だ。この戦略の実現には、カンパニーごとではなく、顧客の市場別の縦軸と共通プラットフォームからなる横軸で管理することが必要だと組織変革を行った。
─工場プロフィットセンター制、製品事業部制、カンパニー制との一連にも見えるが、非連続の組織変革と理解してよいのか。スムーズにいくのか。
確かに、非連続だ。とはいえ、BU制については、1年程度議論し、それぞれのBUトップには6月に発表した「中期経営計画」のドラフトを書いてもらった。その過程で、業績を伸ばすためには、プラットフォームをうまく活用しなければという共通認識が広まった。だから、抵抗はなかった。ただ、本質の「新たなビジネスモデルを確立する」という観点は社員全員が理解しているか、というと、まだこれからだろう。