トランプがこのメタファーを使い始めたのは、10月17日。この日の発表文の中で、「首都ワシントンにたまったヘドロをかき出す」と明言した。これは、政治家たちが過去にも、「政府の汚職をなくすべきだ」との考えを示すために使ってきた例えだ。だが、この3つの単語からなるシンプルなフレーズは、既存の政治に裏切られたように感じ、不満を抱える何百万もの有権者たちにとってはスローガンになった。
トランプはまた、「選挙制度に不正がある」と訴えるためにメタファーを頻繁に使い、有権者に「国を取り戻そう」「さびを払い落とそう」などと呼びかけた。
ジョージタウン大学の言語学者、ジェニファー・スクラファーニは、「トランプは、まさにその発するメッセージーに対して魅力を感じた多くの人たちからの支持を得た」と指摘する。
「比喩を使って語ることで、有権者は、トランプが事前に用意した演説原稿を読んでいるのではなく、自分と親密な会話をしている、という印象を受ける。そして、リハーサルをしたわけではなく、即興で話しているような話し方は、トランプが自分の言葉で語っているとの印象も与える。それが、支持者たちの“本物”、“信頼できる”、“つながりを感じられる”というトランプに対しての評価につながっている」
言葉は両刃の剣
一方、この選挙戦の中では、中心的なトランプ支持者らを刺激したといえる、もう一つの別の例えがあった。
民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントンは9月、次のように述べた。
「…トランプ支持者らの半数は、嘆かわしい人たちだ」
その後、「後悔している」とすぐに謝罪したが、これはクリントンにとっては打撃となった。トランプはこの言葉を、自らの支持者が感じている怒りをさらにあおるために使ったのだ。