歴史を通じて、隠喩は政治的な表現における力強いツールとして使われてきた。トランプもクリントンも、そしてバラク・オバマ大統領も、演説では比喩表現を多用している。
勝利宣言の中でトランプは、「米国にとっては、分裂の傷を縫い合わせる時だ」と語った。国が負った傷を“縫い合わせる”ことはできない。だが、これは隠喩を使った表現を用いてのトランプの約束だ。そして、多くの有権者は分断した国を「癒す」ために、トランプがその約束を守ってくれることを願っている。
一方のクリントンは、敗北宣言の中で、次のように述べている。「私たちはまだ、最も高く、最も硬いガラスの天井を打ち破れずにいる。だが、いつか誰かがそれを実現してくれるだろう──私たちが今考えているよりも、早く実現することを願っている」
「ガラスの天井」は、職場における女性たちにとっての目に見えない障壁を表すものとして、非常によく使われる隠喩だ。
比喩は心に残る
メタファーは常に、政治的な修辞法(レトリック)において大きな役割を果たす。作家のジェームズ・ゲーリーは著書の中でメタファーについて、「一度私たちの心を捉えれば、その後も手放すことはない。私たちは決して、その言葉を忘れない」と述べている。
2016年の大統領選も、私たちが今後、決して忘れないものの一つとなった。