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2016.11.14

ゲーム会社の域を超えた成長に期待[私がこの起業家に投資した理由]

左:今野穣、右:塩田元規(Photo by Toru Hiraiwa)


今野:塩田さんの場合、ピュアで人たらしなだけでなく、思考も深い。事業を進めていく上での“落とし穴”も、アドバイスする前にいつもご自身で想定できています。

「事業のテーマ」と「人」に着目して投資するのですが、アカツキの場合は圧倒的に「人」。塩田さんは、人の才能を引き出すのが上手な起業家です。新入社員が運営する周年パーティーでは、みんなが本当にイキイキしている。1年目から能力を最大化される機会で、また毎年開催することで会社の伝統にもなっている。制度設計で、社内に“文化”をうまく生み出していると思います。

塩田:経営において、企業文化のような定量的に評価できない“目に見えないもの”に先行投資をしてきました。どんなに忙しくても、社内パーティーや合宿を開催するのも、そのためです。文化は育むのに時間がかかるため、その分簡単には模倣できません。ゲームから事業を始め、キャッシュポイントをつくることで、創業当時から企業文化への投資を続けてきました。

今野:アカツキは、ただのゲーム会社ではなく、組織設計に強みがある企業です。つまり、マーケットが変わっても、組織が柔軟に対応できるサステナブルな会社なんです。

塩田:今は、リアルな空間や場所でワクワクする体験を提供する事業に力を入れています。旅行にもアウトドアにも限定されないマーケットなので、「ライブエクスペリエンス」と名付けました。グーグルはテクノロジーが得意でも、面白い体験はつくれません。今後は、これまでのデジタル領域とライブエクスペリエンス事業のリアル領域という2つの間で、横断的に体験を生み出せるプラットフォームをつくっていくつもりです。

今野:アカツキは、スマホゲーム市場で、かつて隆盛を極めた大手も含め、多くの会社が苦戦する中、成果を出してきた企業。その実行力を武器に、ゲーム会社の枠を超えて、成長することに期待しています。


いまの・みのる◎グロービス・キャピタル・パートナーズ最高執行責任者(COO)およびジェネラルパートナー。東京大学法学部卒。アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング(現PwC)を経て、06年に同社に入社し、現在に至る。主な投資先は、アカツキ、スマートニュース、アキッパ、ライフネット生命など。

しおた・げんき◎アカツキ代表取締役CEO・共同創業者。横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。新卒で入社したDeNAでアフィリエイト営業マネージャー、広告事業本部ディレクターを担当。退社後の2010年にアカツキを創業し、現在に至る。

文=山本隆太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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