ビジネス

2016.11.18

フィンテックの旗手「トランスファーワイズ」が目指す先

ターベット・ヒンリクスCEO(Photo by Akina Okada)

エストニア発の海外送金サービスが今年9月、日本でのサービスを開始した。英本国では、すでに海外送金総額の8%のシェアを握る。フィンテックの旗手は何を目指すのか─。

トランスファーワイズは、P2P(ピア・ツー・ピア)のプラットフォームを利用した海外送金サービスだ。例えば英国から日本に100万円を送りたい人と、日本から英国に100万円を送りたい人がいるとする。銀行等を経由して実際に送金するのではなく、それぞれの市場で需要をマッチングし、送金コストを安価に抑えるビジネスモデルが特徴だ。同社は2010年の会社設立以降、1億1,700万ドル(約117億円)もの資金を調達した。トランスファーワイズの可能性を信じた投資家には、ピーター・ティールや、バージン・グループ会長のリチャード・ブランソンといった著名投資家も含まれる。彼らは何を変えようとしたのか。トランスファーワイズの共同創業者兼CEOのターベット・ヒンリクスに聞いた。

既存の銀行が課す不透明な手数料に疑問抱き起業

─トランスファーワイズを設立したのは2010年。なぜ、この事業を起こそうと考えたのでしょうか?

きっかけは、非常に個人的な問題でした。私はエストニアの出身で、当時、スカイプ社の社員としてロンドンで働き、エストニアにある口座あてにユーロで給料が振り込まれていました。ロンドンでの生活費を引き出すためには、エストニアの口座からロンドンに送金する必要があります。同じ頃、クリスト・カールマン(トランスファーワイズ共同創業者)もロンドンに住んでいました。彼は、エストニアでローンを組んでおり、ロンドンからエストニアに向けて送金する必要がありました。

ただ、ロンドンの銀行からエストニアに1,000ポンドを送金すると、送金手数料の20ポンドに加えて、為替レートに織り込まれる形で、3〜5%の不明瞭な課金がされます。銀行は透明性に欠けている。ここをどうにかしたいと考えました。

そこで、エストニアからロンドンに送金したい私と、ロンドンからエストニアに送金しなくてはいけないクリストのニーズをマッチングすれば、銀行の仲介を避けられるのではないか─と考えたのが、トランスファーワイズの始まりです。

ビル・ゲイツは「銀行業務は必要不可欠だが、銀行自体は必要不可欠ではない」と言います。消費者はスカイプやウーバーのようなサービスを求めている。私たちは、銀行のサービスよりも早く、安価で、使い勝手のいいサービスを提供していきます。

─今年9月から日本でもサービスをスタートしました。例えば日本からアメリカに送金するとしたら、どのくらい手数料を抑えられるのでしょうか。

8月に実施した銀行との比較では、日本からアメリカに100万円を送金する場合の手数料は、一般的な銀行を介す場合の3分の1程度でした。約2万円の節約になる計算です。通貨によって異なりますが、ブラジルのレアルだと10分の1程度と、さらに競争力があります。
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文=大木戸 歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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