ジアは経営陣に責任があるとし、LeEcoに在職している間は年間給与を1元(約15円)にすると宣言した。LeEcoは10月に米国進出を果たし、スマートフォンをリリースしてウェブショップを立ち上げ、電気自動車(EV)「LeSee」のプロトタイプを発表したばかりだ。
LeEcoの設立は2014年で、当初の社名は「LeTV」だった。同社は瞬く間に中国で最大のオンライン動画配信サービスへと成長し「中国版ネットフリックス」と呼ばれるようになり、2010年に深セン証券取引所に上場。EV事業の「LeSee」と「ファラデー・フューチャー」、スマートフォンとスマートテレビの開発などの事業を傘下の非上場子会社で手掛けてきた。
現時点でのLeEcoの時価総額は、約780億元(約1兆2,000億円)。6月に米国のテレビメーカー「Vizio」を20億ドルで買収したが、中国で既にテレビ製造を行っていながら、利益がほとんど出ていないVizioに巨額の資金を投じたことに多くの市場関係者が驚いた。
EV事業もトラブルに見舞われている。同社は7月に30億ドルを投じて中国国内にLeSeeの製造工場を建設する計画を発表したが、その後、同社が中国政府から必要なライセンスを得ていないことが明らかになった。
中国政府も支援打ち切りか
米国メディアの一部は、中国政府が国産EVを世界に広めるけん引役をLeEcoに期待しており、同社に対して救済措置をとると予測しているが、それはあり得ない。中国政府は、EV技術を発展させるためにテクノロジー企業に参加を呼び掛けているが、テクノロジー企業が単独でEVを開発することは望んでいない。
中国政府が理想とするのは、アリババと上海汽車によるコネクテッドカー「Roewe」の開発や、蔚来汽車(NEXTEV)と安徽江淮汽車 (JAC)による自動車開発のような、自動車メーカーとテクノロジー企業によるジョイントベンチャーだ。
LeEcoは当初、政府の方針に従って自動車メーカー数社と提携協議を行い、北京汽車と話がまとまりそうになったが、最終的には破談となった。その後、同社は自前での開発を目指すようになった。
ジアの手紙について報じたグローバルタイムズを傘下に持つ人民日報は、中国共産党の機関紙だ。通常、中国政府と良好な関係にある企業のネガティブな記事を掲載することはなく、今回の報道から中国政府がLeEcoに対して心証を悪くしていることがうかがえる。
LeEcoは、米国でEVメーカーのファラデー・フューチャーを手がけるが、この事業もうまくいっていないようだ。ファラデーは、来年1月にラスベガスで開催されるコンシューマー・エレクトロニクス・ショー (CES)で量産モデルを公開するとしているが、最近になって幹部が相次いで退職しており、先行きが不透明だ。
筆者はグローバルタイムズの報道内容に関してLeEcoにコメントを求めたが、今のところ回答を得られていない。