ビジネス

2016.11.10 07:30

トランプ米国大統領は意外とアリか[樋原伸彦のグローバル・インサイトvol.4]


そんな状況なのに、クリントンはゴールドマンサックスでの3回の講演で、675,000ドル(約7,000万円)をもらってしまった。再度BBCのコメンテーターのコメントを引用すると、「あれをもらっていなければ、大統領になれたかもしれませんねえ」と皮肉っていた。

今回の大統領選挙でも、他の国でも、「格差」「金融の特権階級」という言葉が散々使われている。しかし、それは、「格差」の進行ばかりではなく、米国のビジネス全体のパイが縮小した面も見逃せないはずだ。

ビジネススクールでファイナンスを教えている肌感覚で言うと、特にリーマンショック以降は、明らかに金融ビジネスが停滞した。米国では特にである。MBAホルダーの一番の就職先が不調になったために、米国のそれ相応のビジネススクールも最近は学生集めに苦労している。金融セクターで働ける機会が少なくなったおかげで、卒業後に期待できる所得額が大幅に下がってしまったからだ。

その意味では、ここ10年ほどの米国の「格差」の連呼の背景には、金融ビジネスの縮小という側面も否定できないだろう。当然、金融ビジネスからトリクルダウン(最近は禁語のようになっているが)してくるビジネスや所得もあったわけで、かつて米国には、金融やその他のセクターでも、その経路はそれなりに機能していた気がする。
 
トランプ新大統領は、”The Apprentice”というNBCテレビのリアリティショーのホストとして名が売れ、現在のような認知度を得た。2004年に始まったそのTVシリーズは当時、北米のMBA学生必見のTV番組であった。その頃僕はカナダのビジネススクールで教えていたのだが、よく授業でこの番組を話題にした記憶がある(今でもDVDを持っている)。

あのホスト役としての仕切りは、なかなか優秀だったと思う。ホワイトハウスでも、あのくらいの仕切りをしてくれるなら、案外大丈夫かもしれない。そう考えるのは楽観的すぎるだろうか。(第4回終わり)

文=樋原伸彦

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