投資銀行ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのスコット・クレメンスは電話インタビューで「誰が大統領になろうと、米国経済は堅調です。あなたが今週の金曜日にもリタイアするのでなければ、選挙の結果で投資の方針を変えるべきではありません」と述べた。
この発言は、投票結果が経済に影響しないという意味では無い。実際のところ市場は現民主党政権の継続を望んでいる。ミシガン大学の経済学者ジャスティン・ウルファースはドナルド・トランプが政権をとった場合、株価はヒラリー・クリントンが勝利した場合を10~12%下回ると予測している。
一方、米国の歴史をさかのぼれば、投票日以降の市場は株価が下落する傾向にある。Bespoke Investment Groupの最近の調査では、1928年以来、投票日以降の一週間のS&P 500は平均1 %の下落となっている。
しかし、選挙結果をめぐる緊張感の高まりの中で、人々は拙速な判断をすべきでないというのが投資アドバイザーらの一致した意見だ。
「気持ちを落ち着けて、ポートフォリオを冷静に見つめることが大事です。もし、株価が大きく下落して株を手放そうとしても、もう既に手遅れなのです」と、コーナーストーン・フィナンシャル・パートナーのクリス・ザッカラリは話す。「気分が高まっている時は、冷静な判断が出来ません」
株を売らない限り、損はしない
「6月のブレグジットの時を思い出しましょう。市場は数日間下落した後、非常に迅速に回復しました」と冒頭のクレメンスが続ける。「一時的な環境の変化で投資方針を変えることは、良い考えとは言えません」
クレメンスはまた、市場の混乱は大統領選の結果に限らず、様々な要因からもたらされると指摘する。つまり10%程度の変動で投資方針を見直すのであれば、自分の投資方針を根本から見直す必要があるということだ。
「なぜなら、この程度の変動は選挙の結果に限らず、様々な事が原因で起こりうるからです」とクレメンスは述べた。
「市場が落ち着きを取り戻すまで、ポートフォリオを見直すべきではありません。それがいつになるかに関わらず」と前出のザッカラティも言う。
「最悪なのは市場がボラティリティに満ちている時に、投資方針を変えてしまうことです。誰が大統領になろうと、市場が回復する時がやってきます。その時こそ、投資の方針をじっくり考える時なのです。今はただ、待つことです」
ここまでの話で、気分が落ち着かない人は、この事を思い出してほしい。たとえダウが500ポイント下がっても、株を手放さなければ実際に損出を出したことにはならない。手持ちの株を売却しなければ、一銭も失ったことにはならないのだ。
ある意味で、それは選挙の投票と似ている。選挙結果は未来を左右するものだが投票に出かけなければ、全く意味がないのだ。