ビジネス

2016.11.21

日本企業に必要な「イノベーションマネジメント」

Sergey Nivens / shutterstock


現在、経営環境に追い風が吹く中、新規事業・イノベーションへの戦略投資を強化する企業が相次いでいる。しかし、日本企業の多くが、“失われた20年”の過程で、既存事業での利益捻出という“片輪走行経営”に陥っている。「イノベーションに対する経営の在り方」自体を改革しない中での戦略投資では、その効果は持続しないだろう。

いまの日本企業に必要なのは、古くて新しい経営課題である、新規事業と既存事業の双方のバランスが取れた“両利きの経営”の実現であり、前述の7つの主要項目を通じて、組織をあげて持続的にイノベーションに取り組む「メカニズム」を、既存事業と並立するよう組織の中につくることだ。



この課題はなにも日本企業特有のものではない。ゼネラル・エレクトリック(GE)でさえ、2012年頃からジェフリー・イメルトCEOの掛け声のもと、シリコンバレーのスタートアップ並みのスピード感を経営に埋め込むことを目指して、「ファストワークス」という新しいリーン・スタートアップ手法の導入を全世界で展開している。

重厚長大型の既存事業の制度・文化が広く根付く中、従来の手法では顧客ニーズや市場の要請に素早く応えられないと、あえて新たにスタートアップ・プロセスを埋め込むー。グローバルトップ企業も先手を打ってチャレンジに取り組み、イノベーションマネジメントの改革に向けて積極的に動いているのだ。

今回、日本企業の中でも「イノベーションマネジメント」が優れている5社に選定された企業については、過去よりイノベーティブカンパニーと言われてきた企業だけでなく、直近トップ主導で、7つの要素を「掛け算」しながらイノベーションマネジメント全体の改革を進めている企業と言える。

トップのリーダーシップや文化醸成といった“掛け声”に近い領域のみならず、新しい技術やアイデアを事業化(マネタイズ)までつなげるプロセスや、前提となる組織、制度など、いわゆる“仕組み”につながる要素も同時に改革を進めているのが特徴だ。

イノベーションは日本企業の要であることは言うまでもない。これら5社の取り組みも参考に、今後イノベーションマネジメントに取り組む経営者が更に増えることを期待したい。

ふじい・たけし◎デロイト トーマツ コンサルティング パートナー。Deloitte Innovation PracticeのJapanリーダー。幅広い業種の日本企業においてコンサルティングに従事。著書に『CSV時代のイノベーション戦略』がある。

藤井剛 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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