ビジネス

2016.11.21

日本企業に必要な「イノベーションマネジメント」

Sergey Nivens / shutterstock


調査の結果、日本企業の特徴としてリーダーシップや戦略、文化醸成などトップの掛け声が効く取り組みが先行する傾向が見られた。「トップの掛け声が先行し、プロセス・組織・制度の整備が伴わない“掛け声先行型”」が35.1%、「そもそもイノベーションへの取り組み方針が見えにくい“場当たり型”」が36.5%と割合が多く、合計で7割を超えた。

一方、イノベーションマネジメントが優れている「7項目ほとんどが高い水準を示し、項目間の有機的なつながりをつくる“メカニズム型”」は14.4%と一部の企業にとどまった。

日本企業のイノベーションマネジメントの推進を阻害する要因は何だろうかー。それは経営者の「イノベーションに対する3つの先入観」にあるだろう。

1つは、「イノベーションはマネージ(計画・管理)すべきでない」という考え方。世界の経営者の6割が「きちんとしたイノベーションプロセスを通じて、計画的に生み出す」ことが成功するために必要だと答えているのに対し、日本の経営者の6割は「クリエイティブな個人のやりとりから自発的に生まれる」と答えている(「GE Global Innovation Barometer 2014」)。

2つ目は、「イノベーション推進は技術屋の仕事」という先入観。技術と事業の橋渡しが極めて重要であることは言うまでもないが、経営者が主導しないと双方の断絶は埋め得ない。最後は、「イノベーションは“特区(新たなハコ=組織)”で起こすもの」という先入観だ。「特区」が、既存の組織文化とは一線を画す破壊的イノベーションを進める第一歩として有効である一方で、最終的に既存事業内の豊富なリソースをテコにできない特区組織が行う活動は長続きしないことがほとんどだ。

「メカニズム」を組織の中につくる

今回の調査で同じく明らかになったのは、イノベーションマネジメントと業績パフォーマンスに正の相関関係があることだ。

1つは事業規模の観点で、イノベーションマネジメントの取り組み水準が高い企業ほど、売上高の成長率が上場企業平均を上回る。「メカニズム型」企業の売上高平均成長率は10.0%にのぼり、上場企業全体の同率6.2%を大きく超えている(掛け声先行型6.3%、場当たり型企業5.8%)。

また、時価総額の観点からも、イノベーションマネジメントの取り組み水準が高い企業ほど、上場企業平均のパフォーマンスを超過している。13年3月の時価総額を100として指数化した場合、15年12月末時点で上位水準の企業は182。上場企業平均166よりも高く、資本市場からも評価されていることがわかった。
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藤井剛 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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