マネー

2016.11.09

86歳で現役、生き延びるファンドマネージャーの共通点

"オマハの賢人"ことウォーレン・バフェット


あとは、健康で仕事を続けられたことが大きい。私はバフェットやソロスのようなファンドマネジャーになれるかどうかはわからないし、彼らに比べて運にも才能にも恵まれていないかもしれない。でも、彼らに迫るには80代になるまで健康を維持しなくてはならない。

これがなかなかに難しい。この業界でがんばっている先輩方は50歳を過ぎると真っ二つに分かれる。病気がちになって前線から離れていく人と、健康で楽しく結果を出し続けていく人とである。

冒頭のレヴィン氏は、非常にクレバーなテニス選手だそうだ。94歳というだけでもすごいのに、テニスを嗜み、現役のファンドマネジャーとして結果を出すなんて本当にすごい。でも、ミスの少ない堅実なテニスをしているレヴィン氏のプレースタイルそのものが彼を健康にし、ミスの少ないスタイルこそが彼の運用成績の源泉である可能性は高い。

健康といえば、私は経済産業省で「健康経営銘柄」の基準検討委員を務めている。それは、社員の健康の維持発展を経営戦略的に行っている企業を表彰するという制度で、今年で3回目になる。アンケートに答えてもらう形で、健康経営銘柄を発掘していこうと考えている。

ファンドマネジャーに限らず、誰にとっても心身ともに健康は幸福な人生の基盤である。社員の健康に配慮する会社に感謝している社員は生産性が高い、というデータもある。それはそうだろう。逆を考えれば明確だ。社員を道具や消耗品のように扱い、使い捨てにしている姿勢の強い会社の生産性が上がるわけがない。

社員の健康に関する支出がコストなのか、投資なのか。結論はもうはっきりしている。「投資」だ。きちんと社員に投資(教育や健康へのサポート)している会社は、長期的に競争力のある会社であることは間違いない。

要するに、投資活動を行う上で、健康の占めるウェイトが飛躍的に上がってきているのだ。投資先の企業が、社員の健康に関心を払っているかどうかも問われるようになってきたのである。

私も以前は「24時間働けますか」という栄養ドリンクのTVコマーシャルを体現するような仕事ぶりであったが、時代の流れはもちろん、自分の今後のことも考え、より健康を重視する方向に軸足を移していく必要性を痛感している。

レヴィン氏のように90代で全米一ならぬ、日本一の成績を取るためには90歳までたどり着かなければならない。そのためにも、元気で健康でいることの優先順位をあげていこうと思う。

文=藤野英人

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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