爆笑のバースデー・サプライズと夢のある百貨店[小山薫堂の妄想浪費 Vol.16]

10周年記念パーティを意外な場所で。これもひとつのサプライズ!(illustration by Yusuke Saito)

放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第16回。社員のバースデイ・サプライズで生まれた架空のブランドが、関わった人たちの遊び心満載に、百貨店の一角を飾るブランドに!

2016年9月5日、僕が代表取締役社長を務めるオレンジ・アンド・パートナーズは無事10周年を迎えた。

この会社を起こしたのには、ひとつきっかけがある。それまで僕は、大勢の人を集めて得られた情報を拡散する“メディアの力”というものが存在するのなら、テレビこそがその最たるメディアだろうと信じていた。

でも、03年4月に開業した複合施設「六本木ヒルズ」を初めて見たとき、「テレビが場所に追いこされた」という気がした。オフィスやホテル、集合住宅があり、映画館や美術館などの文化施設があり、最新ブランドショップやレストランがあり、会員制クラブまであるこの場所に、個性あふれるユニークな人たちが大勢集うことで、化学反応が起こるように新たな価値が生まれ、それが情報として発信されていくのではないか、と。

これをヒントに「場所に付加価値をつけてメディア化する」会社をつくろうと思ったのだ。

7人で設立した会社は、関連企業を含めると200人以上の社員を抱えるまでになった。そんな弊社がこの10年間大切にしてきたのが、「サプライズ」である。サプライズは感動を呼ぶ。だからクライアントに対してはもちろん、社内でも徹底される。代表的なものが、社員の誕生日に行うサプライズ。12年、僕は副社長の軽部政治に対して、究極のバースデイ・サプライズを計画した。

サプライズには時間をかけて

軽部はすごくいいヤツなのだが、実にチャラい(笑)。クリエイターの僕のそばで事務方として活躍する副社長なのだから、「普通のスーツを着て、目立たなく振る舞ってほしい」とお願いしても、オシャレが趣味で目立ちたがり屋の軽部はまったく言うことを聞かない。それで「サプライズを通して気づきを与えられたら」と考えたのがこんなアイデアだ。

大阪に味覚糖という企業がある。ここはサウジアラビアに工場を建ててビジネスをしているのだが(ここまでは真実です)、まずその味覚糖の山田泰正社長から「サウジアラビアのプリンスが今度来日するので、接待に適したお店を教えてくれませんか」という連絡を入れていただく。

僕が6名で店を予約後、直前に社長から「一緒に行くはずの2名がキャンセルになったんです。せっかくなので小山さんと軽部さん、参加しませんか」との連絡を入れてもらう。メンツは、山田社長と、オーディションをして仕込んだ偽のプリンス、偽SP、偽通訳、そして僕と軽部。さて、ここからが本番である。
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イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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