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2016.11.08 16:30

爆笑のバースデー・サプライズと夢のある百貨店[小山薫堂の妄想浪費 Vol.16]


そこでこれまでの経緯を伝え、「エルメスやヴィトンのように完璧な製品を顧客に販売するという従来のブランド戦略ではなく、顧客と一緒になってブランド価値を高めていく、“ブランド版・初音ミク”のようなことができたらいいなと考えています」と話すと、大西社長は目を輝かせて「おもしろい!弊社も協力させていただけないですか」と驚くようなことを言う。

さすがにお酒の席のリップサービスかなと思っていたら、翌日すぐに紳士服担当役員から電話があり、その数カ月後、伊勢丹新宿店メンズ館8階に「CHALIEVICE」が本当にオープンしてしまった。

大企業ともなればトップはまずリスクを考えると思うけれど、嗅覚でおもしろそうと思ったところにゴーサインを出して実現させる大西社長のような経営者は、本当に心から尊敬する。それに、やはり百貨店はメディアになるパワーがある。アマゾンなどのネット通販が盛況だとはいえ、「対面で品物を売る」究極のかたちである百貨店は、すごく素敵な場所だと僕は思う。

百貨店の屋上は夢の場所

ところで弊社10周年のパーティは、特別に無理を聞いていただいて、伊勢丹新宿本店の屋上で開催した。

このときあらためて感じたのだが、百貨店の屋上には夢がある。空が近く、自由なイメージがあり、治外法権な感じがする。なので、大使館と組んで、百貨店の屋上で世界各国の博覧会を行うというのはどうだろう。

三越伊勢丹ではイギリス展、松屋ではフランス展、高島屋ではインド展とか、パスポートを見せないと入れない「逆出島」的なイベントを開催するのだ。屋上に掲げられた各国の国旗を模したアドバルーンを目印に、僕たちはちょっとした海外旅行を楽しむ感覚で百貨店の屋上を訪れる。2020年の東京オリンピックに合わせたらすごく盛り上がると思うのですが、百貨店の皆さん、いかがでしょうか。

イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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