重要なのは全国支持率よりも州ごとの支持率
ワン博士は、全国を対象にした世論調査についても警鐘を鳴らす。これには、米大統領選では実際の獲得票数ではなく、各州に割り当てられた「選挙人」の獲得数で勝者が決まるという理由の他、全国調査はその性質上、結果が大幅に揺れやすいという理由もある。
例えば、ABCとワシントン・ポストの全国世論調査では今月1日、数日前に6ポイントあったクリントンのリードが消滅し、トランプが1ポイントのリードで逆転する結果となり、ソーシャルメディアを騒然とさせた。だが同じ世論調査では6日、クリントンが5ポイントリードという結果が出ている。
ワン博士によれば、約20ある世論調査のうちこうした極端な結果が出る調査が毎日1つは出ており、こうした「はみ出し者」はより大きな注目を集める傾向にある。そのため、注視すべきは全国支持率ではなく、激戦州の支持率だという。「トランプの勝利は、激戦区の数州を制さなければ絶対に不可能だ」(ワン博士)
トランプの「追い上げ」は単なる「平均回帰」?
このところ、各世論調査の集計結果でトランプの支持率が2~3ポイント上昇したと伝えられている。トランプ支持派はこれを、勝利への「はずみ」を得ている兆候と解釈しているが、ワン博士はこうした見方に注意を促している。
「過去5回の大統領選での世論調査の傾向として、支持層の固定化がある。世論の変動幅は狭い範囲に限定されている。金融などの統計分析ではこうした動きを『平均回帰』と呼んでおり、2008年と12年に続き今年もこれが起きている。物事が一方向に振れ過ぎると、中心に戻る力が働く。クリントンの支持率は落ち込んでいるが、平均回帰の作用が働けば、盛り返すだろう」