Ascendへの出資額は非公開だが、アント・フィナンシャルは同社の決済事業と金融サービス事業の成長を支援すると語った。中国商務部は6月、アント・フィナンシャルがAscendの株式の20%を取得しようと計画していると発表していた。
Ascendはタイの通信大手トゥルー・コーポレーションから分離した企業で、現在はTrueの親会社で農業、リテール、通信分野などを手掛けるCPグループの子会社となっている。
Ascendは電子ウォレットサービスTrue Moneyとオンライン融資プラットフォームAscend Nanoを運営。タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの6か国で事業を行うライセンスを保有している。True Moneyのユーザー数は今年2月の時点で80万人だった。
東南アジアのデジタル決済市場は2兆円突破
シンガポールの決済会社MatchMove Payのデータによると、東南アジアのオンライン及びモバイル経由の購入金額は昨年、220億ドル(約2兆2,700億円)を超えたと推定される。アント・フィナンシャルは昨年、アリババと共にインド最大のモバイル決済サービスPaytmの株式を取得した。Ascendとの提携は、この地域のモバイル決済分野での2番目の投資となる。
アント・フィナンシャルCEOに就任したばかりのエリック・ジン(井賢棟)はプレスリリースで「グローバルパートナーとのネットワークを構築し、今後10年内に20億以上のユーザーにフィナンシャルサービスを提供する」と目標を述べた。
北京のコンサルティング企業iResearchによると、アント・フィナンシャルの決済アプリ「アリペイ」は昨年、10兆2,000億元(約155兆4,000億円)に達する中国モバイル決済マーケットで68.4%のシェアを確保した。2位はテンセント(騰訊)の20.6%だった。
爆発的に伸びている中国人海外旅行者のニーズを反映し、アリペイは70か国の8万店舗で導入されている。独調査会社Gfkによると昨年、中国人旅行者1億900万人は世界各地で計2,290億元(約3兆4,900億円)を支出した。特に人気が高かった旅行先は韓国、タイ、香港、日本だった。