第一に、11月8日の選挙では、クリントンがトランプに対して圧勝し、彼女が国民の信任を得て、選挙公約を実行することが可能になると確信しているからだ。
第二に、ヒラリーの大勝利により、トランプの世界観や政策が否定され、共和党主流派がトランプに「ハイジャックされていた」党を“奪還”できるからだ。その結果、トランプの選挙運動に象徴される極端なレトリックや対立を煽る勢力が弱体化する。
第三に、上院議会は、現在は54対46で共和党が多数派を占めているが、選挙後は民主党が多数派になる可能性が高く、ウィスコンシン州やインディアナ州、イリノイ州の上院選は、民主党が勝利すると予測されている。また、ニューハンプシャー州やペンシルベニア州、ノースカロライナ州、フロリダ州、ミズーリ州、オハイオ州でも民主党が議席を奪う可能性がある。上院で民主党が多数派になれば、クリントンは、法案を通しやすくなる。また、クリントンが政府高官として任命する者の承認も容易になるはずだ。政権交代により、およそ4,000人が新たに政府高官ポストに就任することになるが、このうち1,000人(閣僚・副長官・次官・次官補・大使など)は、上院の承認が必要である。
第四に、上院で民主党が多数派となれば、クリントンは、最高裁判事の任命承認を得やすくなる。1969年にニクソン大統領が、ウォーレン・バーガーを長官に選んで以来、最高裁判所は共和党政権で任命された判事の方が多い。その結果、2000年の大統領選挙では、フロリダ州での投票の集計が争点になったが、最高裁は判事の構成を反映して5対4でジョージ・W・ブッシュに軍配を上げ、彼が大統領になった。 現在の判事のうちの何人かは高齢なので、次の大統領は2名ないし3名の判事を選ぶことができる。最高裁が、5対4か、6対3で多数派が民主党寄りになれば、クリントンが政策課題を実行する際に、裁判所が有力な味方になる。