世界最大規模のスポーツ専門ケーブル・チャンネル、ESPNの月間の解約者数は平均30万人ほど。その2倍を超える契約者が同月、1か月当たりとしては過去最多となる数で解約を申し出たというのだ。当然ながら、ESPNはこのニールセンの発表に反発。データの削除・撤回を要求した。
ただ、実際の解約者数が何人に上っていたのであれ、ESPNがここ数年にわたって顧客を失い続けてきたことに変わりはない。2015年には解約者数が400万人を超え、今年は甘く見積もっても、さらに300万人が解約すると見込まれている(ニールセンが発表した10月の解約者数を考慮しない場合の推計)。
業界筋によると、解約者を300万人以下として推計した場合、ESPNの加入者数は2017年初めの時点で、約8,600万人になると予想されている。動画配信大手ネットフリックスの加入者数と、ほぼ同じ水準だ。
一方、そのネットフリックスにも、多くの「影の」側面がある。コンテンツの制作に多額の資金を投じており、2017年の制作費はすでに、60億ドル(約6,230億円)に達する見通しとなっているのだ。ただし、ESPNの来年の制作費がそれを上回る73億ドルの予定であることは、あまり報じられていない。
ESPNの現状打破のカギは
ESPNと親会社のディズニーにとっては、何がこうした状況の解決策となるのだろうか?簡単なことだ。ネットフリックスを買収すればいいのだ。
ネットフリックスは世界各国で動画を配信しており、今年7-9月(第4四半期)の新規契約者数は600万人近くにまで上る見通しだ。その同社を傘下に収めれば、ディズニーは世界的に配信を行うためのプラットフォームを手に入れる。その上さらに、ネットフリックスが手掛けた数々の受賞作を含むオリジナルコンテンツも手中に入れることができる。
関係としては、コンテンツ制作の世界的大手の側が、配信する側を買収することになり、先ごろ発表されたAT&Tによるタイム・ワーナーの買収計画とは逆の形となる。だが、ディズニーにとってもネットフリックスにとっても、互いに利益があるのではないだろうか。
(買収の観測がある)アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が、ネットフリックス買収という大胆な動きに出るのは簡単なことではない。すぐに行動を起こすことはないだろう。そして、ゴールドマン・サックスがアップルにタイム・ワーナー買収を勧めているとのうわさもある──実に興味深い状況だ。