ビジネス

2016.11.14

「ダイバーシティ」は経営戦略! 実践企業10社と今後の展望

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日本で女性活躍に積極的に取り組む先端企業としての事例ですが、会社と従業員がお互いにウィンウィンの関係でなければ、持続的とはいえません。

また、日本でのダイバーシティ経営先進企業は、消費者に向き合っているB2C企業に集中しており、B2B企業は全体的に遅れている傾向があります。その理由の一つとして、これまでダイバーシティ経営を推進してきた大きなエネルギーは消費者目線、顧客ニーズの発掘だった、ということにあります。

住生活事業での洗面所システム開発など、メーカーでは女性を起用し、消費者の半数を占める女性のニーズを捉えた商品・サービス開発で成功した事例が多くあります。しかし、人材不足に直面する日本市場と、グローバル展開を考える企業は、B2C企業に限らずダイバーシティ「経営」は避けては通れない道です。

今、日本のダイバーシティ経営の先進企業が取り組んでいるのは、「働き方」の改革です。それは労働時間上限の話だけではなく、仕事のやり方そのものを根本的に変える話が多い。働く場所と時間、そして新しい時制に合った組織づくりを行っています。いつまで経っても「みんなのお付き合いで残業しています」という話では生産性は上がらない。

一人ひとりのタスクが明確にあり、自立した権限を与えられ、場所と時間、集中とコミュニケーションが自ら管理できれば、究極的には一番効率が上がっていくと思います。

また、これはダイバーシティ「2.0」ではなく、さらに先の「3.0」の話になるかもしれませんが、社員の「自律」が進めば、必要以上に「管理しない」ということも大事なことです。本来管理は効率を上げるためのものなのだが、管理しやすくするための無駄も多い。「人事評価」に関しても同じことがいえます。そもそも組織運営そのもの、ルールそのものまで根本的に踏み込んでいく、いずれはそういう段階になると思います。

組織や人事評価、管理システムにまで踏み込んだ改革は、トップの強いコミットメントなしには進みません。「社員の働きやすさ」という優しさの視点と共に、「生産性に対する厳しさ」という両輪の価値観を明確に発信している経営者が今、求められているのではないでしょうか。


おおくぼ・ゆきお◎1983年一橋大学経済学部卒業。同年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。99年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010〜12年内閣府参与を兼任。11年専門役員就任。

文=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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