小安:女性をテーマにしたのには2つきっかけがあります。1つは、ダイバーシティの波を受け、女性リーダー研修を受けたこと。日本のジェンダーギャップの状況をグローバル視点でとらえたときに、大きな社会課題だと感じ、解決すべきだと腹落ちしたんです。
2つ目は、数か月前に行ったスイスのビジネススクールでの出来事。ワークショップで「今のあなたを形成した幼少期の重要な出来事を絵に描きなさい」という課題があったのですが、無意識のうちに描いたのが、父が交通事故で入院している絵でした。
さらに「あなたは今、何をやっているのか1文で答えなさい」という課題に対して、私が出した答えが「I help women get jobs」。この課題を通じて、かつて母のように、(能力や意欲があるのに)就労していない女性を増やしてはいけない、「女性×はたらく」をテーマにする、と決心できたんです。
ビジョンを決めたのは2011年の秋。1泊2日ホテルにこもって一人合宿をし、「男性であれ女性であれ、自分がやりたいとことや、こうありたいと思うことを実現できる社会にしたい」と書きました。やりたいことを実現できていないのは、女性のほうが多いのではないか。結婚したら家庭に入って子どもを産むべき、など女性に対する過去世代の固定概念を変えていきたいと思ったんです。
このビジョンを上司に伝え続けていたら、“はたらく育児”を応援するリクルートのプロジェクト「iction!」のオーナーをやるチャンスをいただけました。iction!を通じて、女性求職者が働くことに対して持つ心の障壁と企業側の経済合理性、古い固定概念を変えていかないと、日本で女性が働き続けることは難しいと痛感し、これを解決するのが自分の使命だと思ったんです。
退職して半年経った今年9月から、やりたいこと・ありたい姿=「Will」を叶える実験をする場=「Lab」として、「Will Lab」と名付けて事業をスタートしました。
谷本:今後の事業計画は作られていますか?
小安:年明けに法人化する予定で、その後の事業計画を決めるため、現在「女性×はたらく」をテーマに3つの実験を行っています。
1つは、岩手県釜石市の地方創生アドバイザーとして、育児中のお母さんたちの意識下にある「働きたい」意欲を引き出し、企業とマッチングするプロジェクト。2つ目は、“中長期ビジョン”を描くワークショップです。女性は中長期のビジョンを描くのが苦手な人が多いので、ワークショップを通じて自分が本当にありたい姿を目指してキャリアを選択できるようにできたらと考えています。
そしてもう1つ、雑貨屋さんです。途上国では男女間の教育格差が大きく、例えば、文字の読めない女性もたくさんいます。彼女たちが働く第一歩として、手仕事から働き始めるのが最も取り掛かりやすいのではと考えました。その完成品を展示販売するギャラリーを10月1日にオープンし、今はECサイトの立ち上げ準備中です。
谷本:最後に、小安さんにとって「働く」とは何ですか?
小安:ありたい姿で生きること。そのために働くんです。
小安美和◎Will Lab代表。「女性×はたらく」をテーマに、自治体、企業と共に女性の就労支援、リーダー育成を手がける。リクルートジョブズ執行役員、リクルートホールディングス「~育児をしながら働きやすい世の中を共に創る~iction!」推進事務局長等を経て現職。
現在パナソニック ストアでは、自分らしくキャリアを歩む女性を応援する特設サイト「Let’s talk business! WOMEN」を公開中。それぞれの形で“ありたい姿”や“やりたいこと”に出会い、その実現に取り組む女性たちの生き方、思いとは––。
〜自分らしく、しなやかに生きるために〜
「Let’s talk business! WOMEN」詳しくはこちら>>