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2016.11.02

大腸菌騒動から1年のチポトレ、客足とイメージ回復への険しい道

Joe Raedle / gettyimages


だがウォール街やアナリストたちは懐疑的だ。こうした見通しを設定すると「自らハードルを高くしてしまう」と、投資会社ウェドブッシュのアナリストであるニック・セトゥヤンは指摘する。

不満や批判の声もある。「チポトレがこれまで簡潔さを誇りとしてきたことを考えると、2017年は並外れて複雑な年になりかねないように思える」とグラスは言う。チポトレは長年、少ないメニューと高めの価格を貫いてきた。今後、ファストフード店を手本にするのであれば、それらチェーン店と同様の事業展開を行っていく必要がある。

また同社は、「誠実な食品」を提供するという企業理念を守っていくことも証明しなければならない。しかし、熱烈なファンを獲得し、ライバルとの差別化に一役買ってきたこの企業理念が、同社の悩みの種になっている。

「チポトレのブランド価値と顧客のロイヤリティ(忠誠心)は、タコベルやジャック・イン・ザ・ボックスよりも強く、これがより迅速な業績回復につながると確信している」と、証券会社スティーブンズのアナリスト、ウィル・スレイバーは2016年に入ってから指摘していた。「だがブランド価値とロイヤリティはいずれも、食品の品質にまつわるブランドイメージの構築に役立つものではない」

確かにその通りだった。チポトレが品質にまつわる評判を確立できたのは、カントリーミュージックの大御所ウィリー・ネルソンを起用して現代農業に警鐘を鳴らす歌を歌わせたり、最高級グリルを導入して客の目の前で肉を焼いたり、使用する食材の多くはオーガニックや地元産だとアピールしたりと、あらゆる努力をしてきたからだ。

だがより健康的な食品を提供する店というイメージは、人々が食中毒の心配をせずに安心して店を訪れることができて初めて完成する。最新の数字を見ると、多くの人がまだそこまで安心できていないようだ。

編集=森 美歩

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