中国では数週間前、年1回の公務員採用試験が始まり、中央・地方の120官庁、計1万5,659件の求人に130万人以上が応募した。そのうち最も倍率が高かったのが、「中国民主同盟」という政党の受付職だ。同党は中国で数少ない小政党の一つで、政治的影響力は極めて小さい。
公務員試験の公式ウェブサイトによれば、この受付職には24日の時点で定員1人に対し9,504人が応募している。国営新華社通信によると、公務員職全体の平均倍率はほぼ50倍に達したという。
北京のシンクタンク、21世紀教育研究院の熊丙奇副院長によると、中国民主同盟の受付職がこれほど人気を集めている理由は、中国経済の停滞により良い仕事口が減る中、羨望の的である公務員キャリアに通じる最も簡単な道となっているからだ。
中国では、習近平国家主席の下で大々的な汚職撲滅政策が進められているにもかかわらず、公務員職は安定した給与と手厚い福利厚生、そして比較的少ない仕事量から「鉄飯椀(鉄の茶碗)」と呼ばれ、いまだ高い人気を誇っている。
北京のコンサルティング企業、麦可思(MyCOS、マイコス)によると、700万人以上に上る中国の大卒者の平均月収は3,726元(約5万8000円)で、最低月収が2,000元余りの上海や深センといった大都市での生活がかろうじて可能な程度の金額だ。
試験のウェブサイトによると、中国民主同盟の受付職の要件は、学士号と2年間の実務経験のみ。一方、他の公務員職の大半は、修士号以上の学歴や、開発の進んでいない地域での長年の実務経験を求めている。
21世紀教育研究院の熊副院長は、受付職の人気の理由には低い要件があると指摘。「大半の人が、公務員になるための簡単な道として受け止めている」と説明している。
また、大卒者の数が需要を上回るレベルに増えていることから、条件の良い求人が少なくなっていることも背景にあるという。
「中国の大学が受け入れる学生の数は年々増えている。だが、中国経済は昔から重工業に頼っており、サービス分野はあまり強くない。よって、良い仕事口が少ないのが現状だ」(熊副院長)